(ちっくしょー勘右衛門のやつ、どこに隠したんだ……)


中央で寝入っている女を起こさないよう、忍び足で部屋の中を行き進む。
机の裏か、箪笥の裏か、意外と押し入れに置いてあるのだろうか。ええい間怠っこい! とりあえず押し入れから!
――と、押し入れの取っ手に手を掛けつつ、半ば沸点に達しそうになった時。


「っ、ん、う…ん、」


思わず固まってしまった。
え、ちょ、なにその女郎の啼き声みたいなそれは。
そろーりと振り返って女を見遣れば、もはや視覚だけみれば誘われているかのように、はだけられた肩と鎖骨、それに胸元。


(あ、やば、)


完全に元気になってしまった。
なにが? なんて、聞くな!そんなこと!

今まで春画の中での女でよかったのに、生身の女は狐のように小賢しいと侮蔑さえしていたというのに。
というか、あの時の子どものような雰囲気の女が、うすぼんやりした月夜の灯だけでこんなに艶かしくなるとは、やはり女は侮れない。


(――って、そんな分析してる場合じゃないだろ俺!)


早いとこ春画も愚息も何とかしないと。





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