「雷蔵やハチがそうなら、じゃあ俺も勘右衛門……やっぱ勘ちゃんって呼んで、お姉さん!」 「う、うんわかった。勘ちゃんて呼ぶよ」 「はい!」
仲の良い二人が既にあだ名で呼ばれていることに安心感を持ったのかは分からないが、尾浜……勘ちゃんは簡単に先程マシンガントークを繰り出した彼に戻っていた。が、しかし。まだ久々知くんは人見知り全開オーラを纏ったままだ。
「兵助もハルさんに名前で呼んでもらえば?」 「……俺はいいよ」
うーん、まあそういう、勘ちゃんみたいな天真爛漫な子じゃなさそうだしな、ここは無理強いする必要もないだろう。 わたしは勘ちゃんと他愛ない話をしながら、ランチに箸をつけていく。 ご飯を半分ほど平らげた時に、ある事に気付いた。前に座っている二人の盆にも、それが無いことを確認して、しまった!と思う。小鉢付け忘れてるよ! 急いでおばちゃんの元に行って小鉢を三つもらってくると、勘ちゃんと久々知くんの盆にトントンと、本日の豆腐味噌だれを置いた。
「ごめんね、わたしが付け忘れちゃってさ」 「ありがとうございますー。あっ兵助、今日の小鉢久々の豆腐だよ。よかったね!」 「うん、やった」
どうやら久々知くんは豆腐が好きみたいだな。小鉢置いた瞬間、ぱああっと表情が明るくなった気がするし。
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