「……あの、それじゃあ私はこれで失礼します……」 「えっ」
思いがけずフミカワさんは中座しかけた。何故ここであなたが立ち去るんだ、と疑問符で一杯になる。山田先生も土井先生も不意をつかれた顔をされていた。
「どこにいくというのじゃ」 「城へはもう戻りたくありません、町で働かせてくれる所を探します」 「住居は」 「何とかします」 「向こう見ずな……」
土井先生が呟くと、ちょっと強気な目をして彼女は、だってもう誰にも頼れないんですと言い切った。嫌な間合いが来る前に、そこに被せる学園長先生の一声。
「決めた、お前さんもこの学園に居座りなさい。予知夢についても非常に興味があるしの、なに、遠慮はするでない」 「しかし、私をここに置いて、よりあの夢が本当になるのであれば私は!」 「そんなに脆くはないぞ、うちは」
ニヤリと笑って学園長先生は自慢の教師と生徒がおる、そして何よりわしがいるこの学園を火の海なんかにくれてやる訳なかろうと高笑いした。何故かわたしがほっとした。
「本当に、ありがとうございます……私なんでもします、よろしくお願いします」 「学園長先生、」
彼女がまた頭を深々と下げれば、山田先生が学園長先生にそっと耳打ちする。ふむ、と一つ頷いて学園長先生は言った。
「アキは色々心身共に疲れが溜まっておろう。暫くは何もしなくていい、ゆっくり休みなさい、とそこの山田先生が言っているがどうかな?」 「ちょっ、言わなくてもいい事を……」
さっきの詰問を気にされてるのか山田先生は、苦々しい顔をして呟いた。フミカワさんは彼に向き直ると、お心使い感謝致しますと頭を下げた。
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