「ぼくは右で、金吾は左ね! でね、ハルさんが真ん中だよ〜」 「はいはいありがとうね喜三太。金吾はそれでいいかな?」 「だいじょぶ、です」
一番目に欠伸をしたのは喜三太だったというのに、二人の部屋に招き入れられてからはなんだかやけに楽しそうだ。しかしわたしは、自分が真ん中どうのこうのより、そもそも一年長屋に入って昼寝なんてしてもいいのかと不安なのだが、まあ可愛い一年生の紅葉の手を振り払える訳もなく。
「じゃ、じゃあわたしが真ん中ね、なんかごめんね入り込んで」 「だいじょぶですよお」
横になったら眠気がやってきたのか、喜三太は口元をもぐもぐさせて小さな寝息をたて始める。わたしも、着物が乾くまで少し横になるかとおずおず真ん中に入り込むと、金吾が小声で話し出した。
「ハルさん、」 「ん、なに?」 「今日はほんとうに、ありがとうございました」 「そんなんいいよ〜気にしない気にしない」
横たわって向かい合うわたしと金吾。なんだか変な感じだ、家族でもまして同じ時代の人間でもないのに、とても近く感じる。金吾はふにゃりと笑うと、続けた。
「ずうっと、ここにいてくださいね。ぼくたちとまた、お洗濯したり、昼寝したり、しよう、ね……」
言い残すや否や、すやあと寝入った金吾の頬を思わず撫でる。可愛いなあ。良い子だなあ。大きくなっても、この素直なところは変わらないでほしいなあ、なんて思いながらゆっくり目を閉じた。
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