じゃぶじゃぶと水を含んだ生地の、この時代ならではの洗濯の音がする。
喜三太と並んで川辺にしゃがみこみ、わたしは袴、彼は上着をゆるく洗っていた。太陽が暖かく背を照らして、水面がきらりと揺れ動いている。もうすぐ秋と冬がやってくる、そんな匂いがした。


「……何をされているんですか」
「!!」
「あ、金吾」


いきなり声を掛けられてびっくりしたのは他でもない当事者の喜三太。わたしが振り返ると、金吾はゆっくり喜三太の隣に座った。にも関わらず二人は気まずいのか、それから言葉を発しようとはせず、沈黙の中、喜三太の手が動く度に川の水が飛沫をあげていた。


「……もしかして、着物、洗ってくれてるの」
「うん。金吾、ほんとうに、」
「謝らなくていいよ、もう」


怒ってないよ。
くしゃりと半ば諦めたように笑った金吾を見て喜三太は、自分がとてもひどいことをしたのだ改めて気付いたのか、声をあらげた。


「金吾! これ絶対、今日までにきれいにして渡すからね! いぶ鬼にちゃんと、会えるから!」
「え、知ってたの……?」


当然でしょ〜と漸く、かもめの眉は柔らかく下がった。ぼくは金吾の友達だからね、それくらいすぐにわかるよ、と笑った。


「そっかあ。そりゃ、敵わないや」


そこで金吾も参ったように笑ったので、わたしは、ああなんにも心配することないじゃないかと、ほっとした。




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