「喜三太おいで、今から急いで洗濯しよう」 「はにゃ?」
一年長屋に急いで戻り、自室で転寝している喜三太に声を掛ける。上体だけ起こした彼は、あのいつもの気の抜けた声を発して首を傾けた。
「さっき喜三太のなめさんが這った金吾の着物、あれ洗ってあげようよ! 今ならまだ間に合うから!」 「だって、ぼくそう言ったのに、金吾聞いてくれなかっ、」 「メソメソしないの!」
ぴしゃりと言えば喜三太はびくっと肩を揺らした。先に泣かれないよう畳み掛ける。
「金吾に拒否されたからって、ずっとそのままでいいの?」 「、いやだ」 「でしょ、一番の友達だもんね。だったら、ちゃんと着物きれいにして謝ろう」 「でも、でもそれでも許してくれなかったら?」 「それはないよ」
だって、友達なんでしょう。 そう言えば喜三太はちいさく涙を流した。何も言わず縁側の外に立つわたしに近づき、抱きついた。よしよしするように背を撫でれば、「ぼくは、ハルさんも大好きだなあ」と呟く。心を擽られたようだった。
「わたしも喜三太や、他のみんなが好きだよ。じゃあ外に行こうか。まだ太陽が出ているうちに」 「はあい!」
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