泣き止み落ち着いた喜三太を長屋にひとまず置き、わたしはというと母屋に去った金吾を探していた。昼休みなので自分の仕事を気にしなくても良いのはよかったが、休み時間に彼がどこにいるのか生憎わたしは知らない。ぐるぐると学園を徘徊していると、ようやく、ぽつんと池近くの石の上に座る金吾を見つけた。
「金吾、」
後ろから声をかければ、びくっと肩を揺らして振り返る。泣いていたのだろうか、目元が赤くて瞳が濡れていた。
「ごめん、さっき喜三太と言い合いしてるの見たんだけど……大丈夫? なんかあった?」
何となく、先に喜三太と話をしたことは伏せて問いてみた。金吾は口を金魚みたく開いたり閉じたりして、言葉を選んでいるようだった。太ももに置いたちっさな手がぎゅうっと握られるのを見た。わたしも石の上に座り込む。
「……ハルさんは知ってるから、言いますね。ぼく明日、いぶ鬼と遊ぶ約束をしてたんです」 「いぶき……ああ、」
前に小松田くんの代理で門の箒掃きをした時にやってきた男の子のことか。そういえばあの時、彼は金吾に手紙を持ってきてたっけね。
「いぶ鬼とは中々会えないからすごく楽しみにしてたのに、着ていくはずの着物を、その、喜三太のなめさんたちにベタベタにされてしまって」 「あー成る程、それであんなに怒ってたのか」 「はい。ついかっとなって」
喜三太にひどいことを言っちゃいました。しょんぼりする小さな肩。
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