手ぬぐいを肩にかけて風呂から上がれば、やっぱり肌寒い夜の風がわたしを包む。室町の夜は季節がいつであれ寒いのだ。

自室へ向かおうと廊下を軋ませる。今夜は珍しく最終のお風呂だったから、周りは雪の日のようにシンと静まっていた。まあきっと長屋に近付けば、どこかひとつは灯が点いている部屋があるとは思うけど。
なんて事を考えながら足を運ぶ最中、バシャバシャ水浴びをしているみたいな音が聞こえた。こんな時間に洗濯をする訳でもなし、何なんだ? と、目を懲らせば忍たまがいる。宵闇でよくわからなかったから裸足のまま、爪先立ちで近付くと、ああなんだ食満じゃないか。髪下ろしてたからわかんなかったなあ。しかしびっくりしたわーと内心ほっとしながら(泥棒とかだったらどうしようかと!)何気なく近寄ったら。


「ハル、来るな、」
「? どうかし、ひっ!?」


血だらけだこの人。右腕と、こめかみのところに、こびりついた血の跡が見えた。思わず喉から音が出てしまったわたしを見て、彼は何か唇を動かすと長屋と反対側に走っていった。何処に行くというんだ、こんな時間に水びたしで、……血塗れで。


「……行かないと、行かないと」


駄目な気がする。
あの人を追いかけないと、今ここで放ったら大変な事になると、誰かが耳元で囁いた。弾かれたようにわたしは飛び出す。風が冷たい。




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