すたすたと、わたしをおぶっているのも嘘みたいに涼しい顔で潮江くんは廊下を行き進む。 さっきちらって見たら、どうやらわたしは医務室で寝ていたようだ。やっぱりなんかあったんだな、貧血とかで倒れたんだろう。それが一番当て嵌まる。 ――それにしても。
「ふははっ」 「な、なんだよ変な笑い方して」 「いやーだって潮江くんお父さんみたいなんだもん」 「おとっ……」
ちょっと笑って、それから足をぷらぷらさせれば、遠い昔、おぶってもらった幼いわたしがリンクする。それが懐かしくて、無意識に彼の首に絡ませしがみついていた両腕を、きゅっと強める。
「安心するって意味だよ。ありがとう、潮江くん」 「……気にすんな。その、俺も気にしねえから」 「?」
何を気にしないのだろうか、そして少しだけ見えた彼の斜めの横顔が変に桃色になっていた。 おんぶ、そんなに恥ずかしいんだったら別によかったのに。
… … …
「おばちゃんいますか、ハルさんが」 「ハルちゃん起きたの!?」 「うおっ、はい、」
食堂に入るやいなや、おばちゃんがすごい勢いでカウンターから顔を出した。
「心配してたのよーもう、気分は? 大丈夫? ご飯食べれる?」 「全っっ然問題ないです、すっごくお腹空いてます!!」
潮江くんの背から声を張り上げると、ああやっぱりいつものハルちゃんだわ、とおばちゃんはほっとしたように笑った。おいおい益々よくわからん。
潮江くんはわたしがご飯を食べ終わるまで付き合ってくれていた。雑炊だったけど、いやー美味しかったなあ! ばくばく食べてたら、前に座る彼が何回か、ふっと小さく笑っていた。
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