ちょっとごめんね、とわたしに縋り付いてた喜三太と金吾を離すと、よっこらしょと立ち上がる。


「うおっ、」
「ああっ駄目だよハルさん! そんないきなり立ち上がったら!」


伊作くんの注意も半分に、足に力を入れた瞬間ぐらぐらっと世界が揺れた。というかこの足、本当に自分の足か? 疑いたくなるほど感覚がない。
倒れる、と思い布団にダイブしようと目をぎゅっとつむれば、あるはずのぼすっとした感触はなく。代わりに、トンッと何かにぶつかった。


「バカタレ、だから言ったろうが」
「す、すいません……」


目を開けると潮江くんがわたしを抱き留めていた。この硬い感触はなるほど胸板か、さすがお父さん顔なだけあるな。ムキムキ。


「さっさと乗れ。それともこのまま抱き抱えたほうがいいのか?」
「いやそれはちょっと……じゃ、おんぶお願いします……」
「おう」


ぶっきらぼうにそう言うと、彼はしゃがみ込んだ。わたしはまるで介護を受けてるかのように、庄左ヱ門と伊助ちゃんの手を借りて潮江くんの広い背中にひょいと掴まる。あーやだなー絶対重たいよコレ。


「立つぞ、しっかり掴まっとけよ」
「うおっ!?」


わたしを背負ってにも関わらず、あっさりと立ち上がった潮江くんは、土井先生と伊作くんの方を向いて何か目で会話したようだった。


「ハルさん、ちゃんとたくさん食べて下さいね!」
「うん!(目茶苦茶お腹空いてるからね」
「潮江先輩、ギンギン走っちゃ駄目ですよ!」
「三治郎は俺を一体なんだと……まあいい」


行ってきます。襖を開けた。




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