――学園にて――
用具委員会から借りてきた手鋤で、喜三太としんべヱが中庭の端っこに穴を掘る。 生物委員会の三治郎と虎若は、竹谷先輩に許可をもらって、あの猫の体を清めてきた。 兵太夫と乱太郎が猫をきれいなさらしに包むと、庄左ヱ門が地に埋める。 柔らかく土を被せる伊助と金吾が退けると、きり丸と団蔵で摘んできた花束を供えた。
一年は組の小さな丸い背中が一列に並ぶと、紅葉の手を合わせて思い思いに黙祷を捧げた。 ある者は猫のころ触れた思い出に対し、ある者はハルに取り憑いた時に嘘でも遊んでくれたことに対して。忘れかけてごめんね、会いに来てくれてありがとうと。 11人分のありがとうは、果たして彼女に届いたのだろうか。
――…ざあっ
辺りを包むような、柔らかな風が子どもたちを優しく撫ぜる。それが合図だったかのように、みな一同にぱちと目を開くと同時に大声張り上げる。
「「お姉さん、ありがとうございました!」」
風はもう吹いていなかった。なのに、供えた花束が笑っているようにゆらり揺れて、居てもたってもいられなくなった光の子らは、彼女に会いに駆けていく。駆けていく。
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