――きり丸目線――
そっか、みんなハルさんのこと好きなんだよな。そりゃそうか、誰にも優しくて良い人だもんなあ。 オレだけが特別に気付いてただなんて、どうしてそんなこと、思っちゃったんだろう。
… … …
土井先生がいつもよりずっと厳しい顔をして向かう先はどこなんだろうと思ってたら、ああこういう事だったんだ。前に図書委員の蔵書整理してる時、ちらって読んだことがある。猫又の話。
大抵は何百年も生きた猫が妖怪化するんだけど、すごく愛されて生きた猫はもっとその人たちの側にいたいって思って半妖化するともあった。きっとこいつは、オレたちと一緒にいたかったんじゃないかなあ。
「……え、みんなどうしたんだよ?」 「きり丸すごいね、知らなかったよ」 「じゃあ猫さん悪い妖怪じゃないんだね」 「多分ね」
庄左ヱ門がオレの話に感心し、喜三太が安心して、金吾がそれに同意した。
確かに前に学園に迷い込んだ猫を、オレたち一年は組はとても可愛がってたよ。でも突然いなくなっちゃったんだ。山田先生は、猫は死に際を見せたくない生き物なんだと言ってた。だからやっぱり寿命だったんだろうと思う。
猫又の話が本当かどうかはわからないけど、あの猫がもう死んでしまったのは真実だ。焼きもちからハルさんに取り憑いたのかもしれない。だけどハルさんを取っていかないでほしい、その一心で急ぎ足で学園に戻った。
(あの人がいなくなっちゃったら、オレは、)
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