――裏山にて――



土井の後ろをじょろじょろと付いていく一年は組の姿は、さながら軽鴨のようである。しかし和やかなはずの彼らの顔は、得体の知れぬ不安に侵食されていた。


「土井先生、どこに行くのですか?」
「ハルが倒れた原因に会いに行くんだよ」
「会いに行く……?」


兵太夫と団蔵が首を傾げながら足を進めていると、担任が突然立ち止まった。彼の背中に将棋倒しのように次々に前の人に鼻先をぶつける子どもたちに、土井は見てみなさいと其れに促す。


「あっ……」
「わ……」
「……ああ、」
「思い出したか」


丸い口を更に丸くさせる子どもたちの目線の先、一瞬ぼろ衣かと思ってしまうだろう、痩せ細って丸くなっているそれは、


「猫さん!」
「前にいなくなっちゃったやつだ!」
「こんなとこで、死んじゃってたのか」


どうやらこの痩せっぽちの猫を一年は組は大分可愛がっていたようだ。
土井は、冷静なきり丸の頭にぽんと手を置くと、困ったような顔をして話す。


「ハルには、この猫の念が取り憑いてたんだ。このまま放っておいたらあの子は生気を奪われ死に絶え、猫又と化していただろうな」
「ひいっ!」
「せ、先生! どうしよう、僕たちのせいかなあ!」
「全てがそういう訳ではないよ。私にも思い当たる節があるから」


今にも泣きそうな喜三太としんべヱの頭を撫でると、土井はみんなの顔を見回した。


「この子の為にできること、何かあるだろうか」
「はいっ! 学園にお墓を作って!」
「ごめんねとありがとうをします!」
「よろしい! じゃあみんなで帰るぞ」


この時、土井は自分の組の生徒がこんなにも真っすぐに育っている事が、とても嬉しかったという。




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