――不破目線――



三郎がやけに朝早く起きて(いつもは僕の方が早いのに)もうとっくに支度を終えているのが不思議で、どうしたんだ? 尋ねれば、怒ってるような緊張してるような、そんな妙な気を出して「医務室に行くんだ」と呟いた。


「ハルさんの様子がおかしい。というより、憑かれてる」
「えっ」
「昨夜、善法寺先輩と新野先生が介抱したが、恐らくそれでは元に戻ってないはずだ。なんせ病ではないのだから」
「ちょ、ちょっと待ってよ」


どうしてそんな重要なこと、昨夜の内に教えてくれなかったんだ。
自分で口走ったくせに吃驚した。それを聞いた三郎は目を細めた。


「……ごめん、私も動揺してて」
「あ、いや、僕こそ……じゃあ今から一緒に行かないか」
「そうだな。そのまま試験に行こうか」


… … …


失礼しますと部屋に入れば、善法寺先輩の他には既に潮江先輩がいらっしゃった。


「ハルさんの事聞きました。すみません善法寺先輩、決して邪魔はしないので、一目顔だけでも」
「雷蔵、そんな畏まらなくても大丈夫だよ。彼女は騒いだって起きやしないんだから」


あまり寝てないのか、潮江先輩のみならず善法寺先輩までも目頭に皺が寄っている。
いやそれよりも、一体どういう事だ? 疑問符を浮かべれば、三郎と善法寺先輩交互に今回の経緯を話してくれた。
どうしてハルさんなのか皆目見当つかないけれど、早く目を覚まして、いつもみたいに笑ってほしい。心から思った。




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