――仙蔵目線――
朝日が眩しい。学園長先生に頼まれた忍務で二日空けていたら、もう状況がさっぱりわからなくなっていた。 仮眠でも取るかと長屋に戻れば、苛々と胡座を揺らす不安定な雰囲気を纏った同室がいた。そこで判ったのは、ハルさんが何らかの理由で意識がないということ。
「どういうことだ文次郎」 「最初からなんかおかしかったんだ……俺が、とどめを刺したのかもしれねえが」 「何をした?」 「あいつ抱えて池に飛び込んだ」
思わず、この単細胞めと罵ってしまった。 しかし文次郎、い組でそれなりに判断のできるお前が何故あの人を池に放り込む必要があった。問えば苦々しげに奴は口を開いた。 「いきなり口を吸われたからよ……」 いやまて、冗談はその老け顔だけにしろ。
「本当だっつの! しかも俺だけじゃなくて、まず小平太に噛み付くみてえに口吸いしたからな」 「なんだと…………それで、ハルさんは」 「医務室だ」
すっくと立ち上がり迷わず足を医務室へ向かう。後ろから眠らなくていいのかとか、伊作がぴりぴりしてるとか色々言っていたが、そんなことはどうでもいい。 どうしてもあの人の顔が見たいと思った。
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