「とりあえず危険だから君たちは彼女から離れて」 「……どういう意味だ」 「長次、これは僕の推測なんだ」
けど、と伊作が言ったところで変化が起こった。伊作に言われた通り二人の五年は怖ず怖ずとハルから離れたが、それまでされるがままの大人しかったハルはいきなり、一番近くにいた小平太に抱き着いた。あまりの速さに、小平太本人ですら反応できなかったほどに。
「っ、なんだどうしたハル、!」
自分よりは背の高い小平太に縋り付くように腕を首筋に絡ませるとハルはそのまま自然に唇を重ねた。
「っ、んっ、ふ……、」 「……いや、いやいや待て待て小平太!!」
何をそんな満更でもない雰囲気で唇、というより舌を絡ませてやがんだあのバカタレは!! そもそも級友のそんな姿は見たくないものだろうが!! 誰一人このとんでもない状況に微動だにできずにいる。そんな中、俺はカッとなって小平太とハルの間に割って入った。つか小平太、あと少しでこのまま押し倒す気でいたな。興奮した眼しやがってバカタレ。
「何してやがんだ、ハル! お前も、」 「だいて、お願い」 「!!!?」
ふわりと白粉とはまた違う女の匂いが鼻を掠めた。いつの間にか鼻先までハルが近付いていて、あろうことか、先程の小平太と同じく口を吸われてしまった。
「んっ、ん、ぶはっ! なっ、何をするんだ頭を冷やせバカタレーーーーイッ!!」
唇が離れた瞬間、俺はハルを抱えると勢いよく部屋を飛び出し、そのまま池に飛び込んだ。人間、動揺が振り切ると何をするかわからんな。
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