――潮江目線――



鍛練が終わり、さあ風呂に行くかと長次と小平太の三人で庭を歩いていると、立ち込める独特の匂い。


「これ、伊作の薬の臭いじゃないか」
「ああ臭いもんな! あれ!」
「どこかでまた、穴にでも落ちてるか……いや、違った」
「違った?」


そこにいた、と長次が指差した先は廊下。壷が転がっていてそこから深緑の液体が零れている。全く、不運というより不注意なだけじゃないのか。俺たちは伊作に近付いた。


「いさっくん、大丈夫か? また転んだのか?」
「不注意だぞ伊作、早く片してくれ、臭いがきつくてかなわん」
「……て、」
「どうした」


俯いたままの伊作は、長次よろしく小声で何かしら呟いたと思ったら、勢いよく顔を上げて言い放つ。


「ハルさんの様子がおかしい、早く見付けないと大変なことになりそうなんだ」


… … …


そして今に至るのだが。


「お前ら三人で何してんだ? 返答によっては屋根瓦の端っこに吊すが」
「七松先輩これはですね、」


小平太の声が渇いている。自制をかけている証拠だ。かくいう俺も、目の前にある状況が全く飲み込めない。尾浜が後ろからハルを羽交い締めにし、前から鉢屋があいつの寝着を脱がしているくらいしか。


「ハルさんの様子がおかしいんです」
「端から見ればお前らがハルを輪姦しようと脱がしてるようにしか見れんがな」
「七松先輩落ち着いて下さい」


片膝ついた鉢屋は落ち着いて小平太に渡り合う。尾浜もこいつも嘘を吐いている面ではなかった、何より伊作が「わかってる」と同意したから。




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