「「ただいま戻りましたーっ!」」 「みんなっ!」
それまで自分の名前が飛び出ているにも関わらず、我関せずといった風体で食器を洗っていたハルは、一年は組とその担任が遅めの夕食を取りに食堂に現れた瞬間、ぱあっと顔を明るくさせた。
「お帰りなさいみんな、土井先生!」 「ハルさんただいまでーす!」 「お腹ペコペコだよ〜」 「待っててね、今すぐ用意しますから」
おばちゃん一年は組と土井先生の分お願いしまーす!
そう声を張り上げたハルに返すように、おばちゃんは「ハルちゃんもお上がんなさい」と食事を促した。一年は組と土井半助が一応の最終だと知っていたのだろう。しかしハルは、申し訳ないが食欲がないのでと遠慮したのだった。このことに敏感だったのは善法寺伊作であった。
(おかしいな……ハルさんいっつもおばちゃんの料理食べるの大好きなのに……体調不良だろうか)
… … …
「「…………」」
五年生六年生が呆然と見つめるその先。わいわいと騒がしい一年は組の食事風景ではない、そんなもの日常茶飯事だ。そうではなく。
「先生、駄目ですよ好き嫌いをしては」 「い、いやしかし、人間誰にも苦手なものはあるもので、」
竹輪の煮物が出たため冷や汗をかいている土井に付きっ切りなのである。誰がって、言わずもがなハルがだ。一年は組や土井たちよりも早めに食事を頼んでいたというのに、ハルと彼のやり取りが気になって中々食べ進められない上級生たちに、ひそかに訝しい目を送る庄左ヱ門がいた。
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