四年長屋に帰ってきたタカ丸くんは、ちょっと待っててと言い残すと、すたすたと何処かの部屋に顔を出した。何事かを話すと、すっと寝着姿の綾部が現れた。わたしに気付いた彼は、すっと近付いてくる。


「どうしたんですか」
「あのさ昼間、わたしの部屋にきて、それで外に連れていこうとしてくれたよね」
「……ああ」
「なんていうか、うまく言えないけど、ありがとうね」


別に落ち込んでいた訳ではないよ。でも、一瞬でもセンチメンタルになったのは事実だ。そんなわたしを元気づけようとしてくれたこと、君の優しさは独特で誤解されやすいかもしれないけれど、それを理解できた時とてもうれしかったよ。

そんなような事をかみ砕いて伝えると、綾部は俯いてふるふると肩を震わせた。
何かまずい地雷でも踏んだろうか? 余計なお節介だったかな。でも、自分のことをわざわざ元気づけてくれようとしていた、なんて聞いたら、ありがとうって言いたくてしょうがなくってさあ。


「……じゃあ今度こそ、ターコちゃんの中で日なたぼっこしましょう」
「いいよ、約束、!」
「ぎゅー」


俯いたまんまボソボソ言っていたかと思いきや、いきなり綾部はガバッとわたしに抱き着いてきた。なんか自分でぎゅーとか言ってるし。はは、可愛いな。女の子みたいなふわふわの髪を撫でてやれば、その奥でタカ丸くんがにっこり笑っていたので、わたしも笑った。




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