そのあと間髪入れずに現れた立花くんと中在家くんの仲裁により、なんとか潮江さん食満くんの乱闘は丸く収まった。ちなみに七松は自分も混ざろうとし、伊作は風呂場に足を踏み入れて2歩進んだところですっ転んでいた。あれは痛い。
そしてやっぱり、タカ丸とわたしがセットで風呂にいることは奇妙なようで、すぐに立花くんに同じことを聞かれた。ただトリートメントをしてもらっていただけだと説明すれば、彼も世話になったことが何回かあるらしく、「斎藤のトリートメントは髪にいいな」と同調してくれた。
「――そろそろわたしたちは出ようか」 「そうだね、六年生の邪魔しちゃ悪いしね」
… … …
ぺたぺたと廊下を歩いている。 隣にいるタカ丸は、今日はすこし冷えるねえと眉をハの字にさせて微笑む。
「タカ丸くん、今日はどうもありがとうございました」 「いいよー俺も久々にゆっくり髪に触れられて楽しかったしね」
ぐいーっと伸びをするかのように、両腕を天井に伸ばす彼に、わたしはとある事をお願いした。するとタカ丸さんは一度びっくりしたように目を開いて、それから初めて見るような、あの力の抜けるような笑顔ではなくて、ふんわり優しく笑みを浮かべた。
「――綾部くんに、昼のお礼がしたいんだ」
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