飴屋を離れたあと雷蔵はわたしにうどんをご馳走してくれ、ぶらぶら町を見終わると、流れで手を繋いだまま一緒に帰路を辿る。
雲ひとつないきれいな青空を仰ぎながら、ちょっと前を歩く雷蔵と繋ぐ手をぶらんぶらん揺らしながら歩いていると。


「――ハルさん、」
「はい?」
「答えたくなければ何も言わなくていいです。ただ、一つだけ質問させて下さい」


あなたは一体、何者なんですか。

ひゅうっと冷たい風が通りすぎると、緑の稲穂がざわざわと騒ぎ立てた。
……尤もな質問だ。買い物の仕方もわからない、この時代では立派な大人の女が、突然一身上の都合というだけで学園の食堂で奉公する。

気付けば雷蔵は立ち止まり、わたしを真正面から見ていた。その表情には、初日にあった不信感は見当たらないけど、明らかに動揺が含まれている。
腹を括った。


「誰にも……特に生徒には絶対に言わないって、約束できる」
「はい」
「じゃあ、本当のことを話そうか」


きっと信じてもらえないと思うけど、と前置きをして話し始める。
元々この時代の人間ではないこと、気付いたら室町の海にいて、乱太郎たちに助けられたこと。学園長先生にお願いして住み込みで働いていること。要点だけかい摘まんで話すと、雷蔵は想像していたよりも驚いてはいなかった。逆に、やっぱりなと納得さえしていた。




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