「――いやでも判るわよ、仕事一筋で恋仲の一人も見せないとあれば、お母様も心配されるのは道理だわ」


ん? おばちゃん誰と話してるのかな。
この時間帯だったら大体先生方がお茶を飲みにいらしてるっけ……なんて、さして気にせず、食堂に戻れば。


「うわっ、なんでトシキチさんがいるんですか」
「利吉だと言っただろう、あと何で“うわっ”とか言った」
「そ、空耳じゃないですか?」
「目が泳いでいるぞ」


わたしとリキチのやり取りを見ていたおばちゃんは、交互に視線を動かして、それからカラカラと笑いだした。


「なあんだ、利吉くん、ちゃんと好い人いるんじゃないの」
「はあ!? ちょっ、おばちゃんやめてくださいよ!」
「やめてくださいってどういう意味ですか」
「そういう意味だよ」


利 吉 て め え !!
今のわたしはもれなく、下級生にはとてもじゃないが見せられない顔になってますからねコレ!


「いやあたしにはお似合いに見えるけどねえ。年齢もさして代わらないし」
「えっ!!? そうなのか君!?」
「あなたがいくつか知りませんけど、わたしは今年で――」




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