目の前にいるから無視するわけにもいかないし、かといって何の用件か判らないのでどうすればいいのかと、ひたすら箒を動かしていると、おもむろに少年は懐から白い長方形の何かを取り出して、わたしに差し出した。


「ん?」
「あの、この文を一年は組の皆本金吾に渡していただけますか?」
「文……あーお手紙のことか、いいですよ。渡しておきますね」
「あ、あとその時、なるべく他の人に見つからないようにこそっと渡してもらえたら……」
「はい、わかりました」


そんなやり取りを終えると、男の子は幾分ほっとしたように息を漏らした。今度はわたしから話し掛けてもいいかな。


「えっと、きみはこの学園の生徒じゃない?」
「はい。ぼくは、どくたまですから」
「どくたま……」


どくはともかくとして、多分後ろの“たま”って忍たまと同じ括りなんだろう。とすると、きっとこの子もどこかの忍たまなんだろうな。勝手に解釈していると、少年はわたしを見上げて口を開いた。


「お姉さんは初めて見ました、新しい事務の人ですか?」
「事務というより、普段は食堂で働いてます。ハルです」
「あ、ぼく、いぶ鬼といいます」




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