申し訳なさそうに頭を傾ける変装名人。 初日……ああ、廊下のあれか。 もしかすると五年生のみんな、あの時のこと気にしてたのかな。そういえば全員に謝られたことになる。
「あーいいっていいって、しょうがなかった事ですから。えー……」 「鉢屋三郎。三郎でいいです」 「あ、はい。じゃあ三郎、この通り普通になんとかやってってますので、もう気にしないでね」
ね、はっちゃん! 同意を求めると、なんかニヤニヤしてた彼は、いきなり振られたからかしどろもどろになりつつ、そうっすね! と大声で肯定してくれた。
「ところで、三郎、わたし君とどっかで話したことあるかな」 「(!!)……いや、今日が初めてですよ。事実、つい先刻まで雷蔵だと思っていたでしょう?」 「あ、そっか」
話したことがあったなら、いくら容姿が瓜ふたつでも話し方や声で見分けられると思うし。 ……でもこの声、どっかで聞いたことあるんだよな〜勘違いかな。まあいっか。
「俺からも質問いいですか?」 「なに? はっちゃん」 「その簪すっごい珍しいものですけど、誰かからの贈り物ですか?」
綺麗だよなー! と、はっちゃんが三郎に絡む。三郎も確かに珍しいと言った。 わたしは秘密だと、そう曖昧に濁すしかなかった。 だってこっちも皆目見当つかないからね。
「――よーし、そろそろ戻ります! 二人とも今日は本当にありがとうございました! じゃあね!!」
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