わたしと立花くんのやり取りを見ていた五年生の二人は、立花くんが去ってから漸く話し掛けてきた。
「ハルさん、もう大切なものは……」 「うん! 立花くんとシオエさんが返しに来てくれたよ、委員長だからとか言ってた」
二人とも迷惑かけてごめんね〜。 何かお礼をしてあげれたら良いんだけど……と漏らすと、はっちゃんは全然気にしないで下さい! と握りこぶしを作った。笑った。
「あの、これさっき落としましたよ」 「え……あーこの簪! うわっほんとだ無くなってる!」
バッと自分のズボンの腰紐を見ると、挿しておいたはずの簪が無くなっていた。雷蔵が持ってるってことは、兵太夫たちを追っ掛ける直前に落としたんだな。危ない危ない。
「拾ってくれてありがとう。コレなくしたら困るものだったから、多分」 「多分、ですか」
そう言って雷蔵はクスッと零すように笑った。 ……あれ? この人もしかして。
「雷蔵じゃなくて、もう一人の方ですか……?」 「!!」 「おっ、ハルさんすげえ! 三郎を見破れるなんて!」
頭の後ろで両手を組んだはっちゃんが面白そうに声を上げると、わたしに簪を差し出した“彼”は、さっきの立花くん以上にびっくりした顔をして、どうして解ったんだと呟いた。
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