――ハルside――



この学園でお世話になって、結構経ったんじゃないだろうか。
その間、きり丸がいつもやけに忙しそうにしてるのは何でだろう、とは思っていた。


(そうか、アルバイトしてたんだ)


今日すべてわかった。
思えば、親はいないと知られた時、きり丸が一番にわたしを学園に連れていってもいいと言ったんだ。出会った最初からわたしに親切にしていたのも、きっと自分とわたしを重ねて見ていたからなんじゃないだろうか?

親がいないっていうのに、こんな寮暮らしの学園生活が悠々自適にできる筈ない。きっと自分で学費を出しているから、アルバイトに追われているんだろう。
わたしの生きている時代や日本という環境での物差しを使っちゃいけない、いけないって判ってるけど、やっぱりだめだ。
寂しくて仕方ない、なんて聞いたら、抱きしめるしかないよ、そんなの。

同情だとか偽善だとか言われてしまうかもしれないけど、その時わたしは心から、この小さな男の子の背負う寂しさや悲しみを緩和してあげたいって思った。
一人ぼっちじゃないんだよって、安心できたらなんていいだろうと。


「……っ、ふ、」


小さな声で泣いているきり丸の背中を撫でていた、わたしも一緒に泣きそうになった。




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