女の人の身体に身を寄せたのは、母様が最後だったんじゃないだろうか。昔のことすぎて、よく思い出せないけど。 なんで女の人はこんなに柔らかくて、あったかくて、落ち着くのかな。土井先生とは違う。不思議だ。 抱かれながらぼんやりしていると、ぽつりと頭上に落ちる言葉。
「――でもね、」 「?」 「わたしにも寂しくなる時がくると思う」
今は忙しくて新しい世界に慣れる事に精一杯だけど、と付け加えて、ハルさんは胸に寄せたままオレの頭を撫でる。
「そんな時はきり丸に会いに行くよ。きり丸も寂しくなったら、わたしのところにおいで。お互いで、半分ずつにしよう」
――昔、土井先生に言われたことが唐突に蘇った。
いつかお前が会うだろう本当に大切な人は、お前を寂しくさせることは決してないよ。 だから生きろと。先生は言ったね。
あれ、本当だったね。
「……っ、ふ、」
泣いた。 意地でも泣くもんかって思ったのに、同情なんていらないと思ってたのに。 あたたかいものを跳ね退けるほど強くはないから。 ハルさんは泣き笑いみたいな顔をして、兵太夫と金吾がくるまで、ずっとずっとオレの背中を撫でていた。
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