オレは、オレの持っていたもの全て失った時、もう生きてはいけないと思ったんだ。
今より子どもだったからとか、そんなんじゃない。
一人で生きないといけないっていう、終わりの見えない寂しさに押し潰されて消えそうになったんだよ。

だから、親がいなくて記憶も曖昧で、一人ぼっちだったあなたを放っておけなかった。きっと怖くて寂しくて仕方ないって思ったから。

今はオレにも、土井先生や乱太郎やしんべヱ、みんなのいる学園があるから笑っていられるけど、ハルさんは違うだろ?
ぽんと放り込まれた見知らぬ場所で、どうしてそんな風に、一人でも強いの。


「――きりちゃん、」


はっとした。
まさか口に出していたなんて、失敗した。
親がいないとか一人ぼっちが寂しいとか、オレの気持ち、誰にも言わない、言いたくもなかったのに。つい。

どう誤魔化そうか考える暇もなかった。
ふわりと風が揺れると、気付けばオレは、ハルさんにぎゅうっと抱き寄せられていた。


「きりちゃんこそ強い人だね。わたしは強くなんかない。きりちゃんみたいな優しい人がいるから、頑張れるんだよ」


それは今にも泣きそうな声だったので、オレはつられて泣きそうになったんだ。




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