――綾部side――



「……喜八郎、狸寝入りでしょ」
「タカ丸さんこそ、さすがシティーボーイですね」
「はは、横文字だめ絶対」


ったく、折角授業抜け出してプリンの約束をかこつけて、あわよくば日なたぼっこでもと思ってたのに、まさかのタカ丸さんの介入でおいしい所全部持ってかれたような気がする。


「喜八郎が本当に寝るなんて、長屋以外で見たことないもの。
というより、彼女どうしたの? 捕まえてきたの?」
「だーいせーいかーい。たまたまターコちゃんにはまったのを、そのまま持ち帰っただけですよ」


タカ丸さんだってあの人の髪に触れる事が出来たんだし、よかったじゃないですか。それにしても、あれがカリスマ髪結いの手練手管ですか。忍たまの僕らにはとても真似できません。

半ば悪態めいた当てこすりをすると、気にも留めてないような口ぶりで、そうかもねと笑った。


「君の髪に触れていたあの手を奪って、握ってしまったのがそんなに気に入らなかったのかな」
「……っ! もういいです、タカ丸さんなんて七松先輩の塹壕に落ちてしまえばいい」


たまに気持ち悪いくらい勘がいいから嫌になる。
ああそうだよ、そのまま触れていてほしかったんだ。
僕の結った髪を、優しく梳いていたあの柔らかい手で。


「……タカ丸さん、今日のことは」
「うん、内緒ね」


全くどこまで解ってるのか。
取りあえず僕は、興味があるだけだよ。




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