クラサメ隊長〜
ああっもうめっちゃ素敵!
好きですぅー!
『たっいちょー!今日もカッコイイです付き合ってくださーい!!』
「却下だ」
ズーン、と効果音が付きそうなくらい私は落ち込む。しかしこれもいつものこと。私は0組の指揮隊長であるクラサメ隊長に恋をしているのだ。出会った時からアタックしてると言うのに振り向いてさえくれない。
『ねーべりたん、隊長酷いよねー?』
「変なあだ名をつけるな」
常にクラサメ隊長の隣にいるトンベリを抱き締めて言えば頭をぶっ叩かれた。べりたんかわいいじゃん。
「いい加減にしろ。お前はそれだけでなくとも落ちこぼれなんだからな」
『落ちこぼれ結構ー!どーせ戦闘にしか脳がないバカですよー!!』
ジャックやシンク、ナインと同じく私は補習組だ。でもわざとなんだよ、それ。クラサメ隊長にもっと勉強教えて欲しいから赤点取ってるんだから。
「いいから、さっさと報告書の再提出をしろ。あと落書きは禁止だ」
『ぶー!落書きじゃないです、クラサメ隊長に捧げる愛のラブレターですぅ!』
「いらん」
ああもう、そんなクールなとこもカッコイイ。そのマスクの下も見てみたい。願わくば、あなたの笑顔も。
「おい、聞いてるのか」
『Σ!!』
じーっと彼を見てると、いきなり声を掛けられてハッとする。ちょっと近いですクラサメ隊長そのまま(マスク越しで残念だけど)キスしていいですか。
「やめろ」
『あだっ!?ちょ、私まだなんも言ってないですから!』
「お前のは口に出てる。っというかまだとはなんだまだとは」
なんてことだ。いや、でも私の本音だし、まあいいか。えへへ、と笑えば隊長からため息が聞こえた。
『むぅ、隊長を好きって気持ちは本物ですからね!信じてください!!』
「わかった、わかったからくっつくな」
『わーん!べりたんのご主人様冷たいよぅ!!』
「だからやめろ」
ぎゅー!と腕にだけば、いい加減べりたんにも飽きられたのか包丁をプスリと頬に刺された。え、ちょ、痛いんですけど。
『べりたんんんんんん!?』
「ああもう、世話の焼ける…」
ほっぺから血が吹き出す私を見て、眉間を押さえながら二度目のため息を吐いた。痛さにひぃひぃと泣いて、床に座り込む。するとクラサメ隊長がしゃがみこみ、私と視線を合わした。ドッキーン、と激しく胸が高鳴る。
『クククククククラサメ隊長…っ!?』
「少しは大人しくしてろ」
そう言ってそっと私の頬に触れてくるクラサメ隊長。ひやりとした手が妙に心地いい。やっぱり、カッコイイよ、隊長。
「これでいいだろう」
『ぁ…』
いつの間にかケアルで傷が治っていて、彼の手が頬から離れた。ふ、と気付く。クラサメ隊長の瞳が凄く優しいことに。
『クラサメ、隊長…?』
「…無駄な怪我をするな、ゼロ」
声を掛ければいつもの隊長に戻る。でもさっきみたいな隊長を見られて私は凄く幸せだった。
『クラサメ隊長、好きですー!』
「取り敢えずお前は早く課題をやれ」
『ひぃ!隊長鬼畜!でも大丈夫!!私は根っからのMですからっ』
「聞いていない」
こんな話でも反応を返してくれる優しい隊長が私は好き。ほんとは隊長、気付いてるんじゃないのかな、私がわざと落ちこぼれやってるって。
「ゼロ?」
『なんでもないでーす!』
べりたーん!とトンベリを振り向けば今度は逃げられたくそぅ!とか思ってると、さっさとやれ、と頭を殴れた。愛の鉄拳ですねわかります。
『隊長ー』
「なんだ」
『これ終わったら付き合って下さい!』
「拒否する」
相も変わらない態度にケチーと口を尖らせて課題をやり続ける。やがて半分くらいまで出来たとき、クラサメ隊長が、ゼロ、と私の名前を呼んだ。
「それが終わったら食事ぐらいは付き合ってやる」
『!!!! ほ、ほんとですか!?じゃあリフレいきましょ!リフレ!!』
「終わらせたらな」
その言葉に私の頭が活性し始めた。早く終わらせる→隊長と食事できる時間が長くなる→ならとっとと完成させてやる!!
『わーい!出来たぁ!!』
「やはりわざとだったか」
ぎくぅ!?と私は冷や汗を垂らす。あれから数分もしないうちに終わり、しかも不正確はほぼ無い。これは食事に行けずに説教ルート?うわぁ。めっちゃやだ。
『たっ隊長…』
「行くぞゼロ」
『へ…?』
怒られるの覚悟していたが、クラサメ隊長は咎めることなく歩き出した。ゆ、許してくれるのかな?それとも呆れてるだけかな?どっちにしろ食事には付き合ってくれるみたいだから、やったぁ!!
『隊長大好き!』
「後でゼロには罰として私の仕事を手伝ってもらう」
『ひぎぃ!?やっぱりそうなりますよね!!!!』
面倒くさいこともあるのだが、クラサメ隊長と一緒にいられる口実も出来たので万々歳だ。嬉しくて前を歩くクラサメ隊長の腕にしがみつく私。
「ゼロ」
『クラサメ隊長ーっ!愛してます!』
「……はぁ」
ああ、溜め息も色っぽいなあ、なんて思って見てると、突然壁に押し付けられた。え?え?なんで?
「覚悟は出来てるんだな、ゼロ」
『か、覚悟?え、ま、待って待って、待ってくださいっ』
「待てない」
かちゃ、とマスクを外すクラサメ隊長。ドクンドクン。初めて見る彼の素顔に、段々と心臓の鼓動が早くなる。その顔に刻まれた火傷の痕は嘗て同じ四天王と呼ばれた仲間を失った時に負ったたものだろうか。
『隊、長』
「愛してるなど、簡単に言うな」
『…で、でも…ほんとに、好き、なんですよ…?』
そう言えば荒々しく口付けられる。びっくりしたけど、嬉しさが込み上げてきて、私はそのまま隊長を受け入れた。触れ合った唇から、温かさが溢れ出る。気持ちが止まらない。
『は、っ隊長…?』
「……私も、愛している。好きじゃ足りないくらいに」
『! う、そ…』
離れた隊長の口からは信じられない言葉が出る。その言葉が、すぅ、と胸に溶け込んできた。
「私が嘘を吐くとでも?」
耳元で囁かれて顔を真っ赤にした私はぶんぶんと首を振る。ゆ、夢じゃないよね?私、クラサメ隊長にキスされたんだよ、ね?うう、凄く嬉しい…っ。
『大好き…愛してます、隊長…』
「知っている」
マスクを外したクラサメ隊長が笑った。いつも以上にかっこよくて、私はまた顔を真っ赤に染める。そしてもう一度、愛している、とキスをされた。
love me!
私を愛してください――
(クラサメ隊長ー!)
(うるさい、ゼロ)
(やーん!好きだなんて照れます!)
(言っていない)
(おおふ、相変わらず冷静な隊長…っ!でもそこが好きです!)
(…はぁ)
(そーいえば隊長はいつから私を好きなんですか!?因みに私は最初からです!)
(聞いていない)
(ぶー!答えて下さいっ)
(………気付いたらだ)
(曖昧すぎますぅ。隊長ってば照れ屋さんなんだからぁ!)
(黙らないと口を塞ぐぞ)
(!!!!!!)