どうして戦争があるのかな?
そう言ったら、大人たちは権力のためだと言った。
わかってる。
でも、それって悲しすぎるよ。
今こうして、魔導院にいることも、また難しくなるかもしれないのに。
どうしてそんな、悲しいことをするんだろう。

「ゼロ、ただいま〜」

やんわりとした口調が、私の名前を言った。
振り向けば、そこにはいつもみたいに笑ってるジャック。
でも、雰囲気がいつもと違う。
嫌なことでもあったのかな?

「あ、ジャックお帰りなさい」

背中に重みがかかる。
同時に、ジャックの匂いもする。
これは“おかえり、ただいま”の儀式みたいなもの。
0組で、出撃数の多いジャック。
いつも明るいけど、事実疲れてたり、恐怖を抱くことがあるのを知ってる。

そんなジャックの頭を、私は優しくなでる。
すれば、私に回されているジャックの手に、ぎゅっと力が込められた。
私でも、はっきりとわかるくらい。

「ジャック、苦しい」

でも苦しいかな。
私より大きいし、男の子だから、そんなに力がはいると苦しい。
特にお腹だし…。

「あ、ごめーん。じゃ、こうならいい〜?」

後ろにいたジャックが、私の前に来た。
そしてすぐに、また温かい、包まれる感覚。
今日のジャックは、いつもより声が切ない。
やっぱり、嫌なことがあったんだろう。
態度は、あくまでもいつものままだけど、私はそう思うしかないんだと思う。

「ふふっ、ジャックは甘えたさんだね」

優しく、ジャックの背中をあやすように叩く。
ぽんぽんと、一定のリズムで。
きっと今、彼にはそれが必要だ。

「これからも、ずっと私が隣にいなくちゃね」

私にはジャックの顔が見えないから、今どんな表情なのかわからない。
でもいなくなってほしくないから、ずっとそばにいたいから。

(私は)
(僕は)
((君と一緒に))

「ゼロ」
「ん?」
「これからも、ずっと一緒にいよ〜?」

すでに、ジャックは私から離れて、目の前にいる。
さっきとは違って、なんだかすっきりした顔つきになってる。

「そうだね。明日も」
約束じゃない。

「明後日も」

ただの宣言。

「過去も」
私と

「未来も」

彼の

「「ずっと一緒にいよう」」

これからの人生宣言。

11.1202