騎乗位(ヲルヘン)5/5


「…はっ……あっ……」
 蕩ける、という表現は果たしてこういう場合相応しいのかどうか分からないが、はじめは異物を拒むように私の侵入を妨げようとしていた彼の内部の動きがある一時を過ぎると今度は奥へ奥へと誘い込むようなものに変わる。
「ヘンリー、大丈夫か?苦しくはないか?」
 私と出逢うまではココで男を受け入れ快感を得るなんて考えたこともなかっただろうに。
 奥に突き込んでから入口近くまで引き抜く緩慢な抽挿にヘンリーは恍惚として切なげに眉を顰め、きゅ、と私にしがみ付いてくる。
「あっ!ん、あぁ……ウォル、タ……」
 ソコはいやだ、とむずがるように首を振り舌足らずの声で訴えるヘンリーを宥め、顔のあちこちにキスを降らせた。
 二本の指で抉ってやったその場所は相当弱いらしく肉壁を嬲る度に私の肩口に押し当てられた彼の口唇から甲高い嬌声が引っ切り無しに零れ落ちて…堪らない。そろそろ私の方も冷静ではいられなくなりそうだ。
「駄目、も…無理だ、はやく……」
 涙に滲んだ瞳で交合を強請るヘンリーに頷き、私はゆっくりと仰向けに自分の身体を倒した。
 あとは彼が私の腰の上に跨り、すっかり蕩けた後孔に私を迎え入れるだけで良いのだ。ここまでのお膳立てをしてやればヘンリーも楽に事を進められるだろう。
 ああ、しかしながら今後、彼がもし本当に日本刀を手に入れられる日が来ても真っ先に斬られるのは間違いなくこの私なのだろうな…何だか理不尽なものを感じるが、しかし今のこの夢のような眺めと比べればそんなものは些細な事のような気がしてきた。
 仰向けになっているおかげでこちらからは、彼が私の勃起したペニスの先端に自分のアヌスの位置を合わせているところまで一部始終余すところなく見えている。
 こんな光景もう二度とお目にかかれないかもしれない、網膜のフィルムにしっかりと焼き付けておかなくては。
 じゅぶ、と音をたてて私の先端が彼の体内に呑み込まれようとしたところで、私達は同時に「あ」と声をあげた。





「………ウォルター」
「……………・・・・・・」
 低く地を這いずるようなヘンリーの声に、スミマセンうっかりでちゃいました、とは死んでも言えなかった。
 言えなくても実際暴発してしまったのは誤魔化し様のない事実で、勢いよく飛んだ精液はヘンリーの腹から太股までをぐっしょりと濡らしていた。
 ……ああ、穴があったら入りたい。むしろヘンリーの怒りが解けるまで核シェルターの中で頭から布団を被って震えていたい。
 散々焦らされたうえでの挿入なのだからこういうアクシデントも仕方がない、事故だ、これは事故なんだと慌てて弁解する私にゆらりとヘンリーは頭を上げ、帰服の剣に貫かれたゴーストよりももっと重く恨みの籠った声でぼそり、呟いた
「……私の体内以外での射精、マイナス50」
「ちょ、待ってくれヘンリーこれは不可抗力だ、お前が名器なのが悪い、そうだ、私ばかりが悪いわけではッ…」
 なあ、ウォルター。ちょっと外で話そうか。そう言いながら寝台を降りてさっさと服を着込み、手斧を手に取ったヘンリーに微笑みかけられる私は譬えるなら蛇に睨まれた蛙そのものである。
 蒼白の顔面を引き攣らせながら「はい…」と応える私の耳には、「なに、すぐに済むよ」というヘンリーの静かな声が今日ばかりは死刑宣告のように重く響くのだった。


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