騎乗位(ヲルヘン)4/5


「恥ずかしいも何も、今までその口が咥えていたものだろう」
 可愛らしい反応にむくむくと性質の悪い悪戯心が湧き上がり、どちらのものか分からない透明な体液でべとべとにぬれたペニスをヘンリーの頬に擦りつけてみる。
「なっ…、変な事するなよ……んっ…や、…」
「こいつがいつもヘンリーのアヌスに入っているんだぞ、そうつれないことを言うな」
「そういう事言うなって…!」
 ぬるぬると頬から顎のラインを辿る私の性器を両手で包み込む事で捕え、先端にちゅ、と音をたてて口付けをした後で彼は奉仕を再開させた。
 悪趣味な悪戯を中断させるためとはいえ、自分から陰茎に手を伸ばし顔を寄せてしゃぶりつくなどいつもの彼からは想像もつかない姿だ、はじめは乗り気でなかった私だが、彼の媚態に煽られるうちに獰猛な情欲が完全に頭を擡げていく。
 このまま口の中に放出しても構わないのだろうか、顔面にぶちまけるという選択肢は選べるのだろうかと嬉々として「どちらがいい」と尋ねれば答えは事務的に「どちらもマイナス点になるからダメだ」と却下されてしまった。

「………」
「そ、そんな顔するな。今日はアレだけれど、次は君の好きな様に…」
 しょげた顔から一転、ニィィ…と口元を釣り上げる私にヘンリーが青褪め、ハッとして口を噤んだがもう手遅れだ。
 口約束とはいえ契約は契約、この茶番が終わった後には、口は災いのもとという言葉の意味を嫌という程その身に思い知らせてやろうではないか私の愛しくもつれないヘンリー・タウンゼント。
 悪魔の笑みを浮かべる私から顔を背けて彼はわざとらしいぐらいに大袈裟な咳払いを落とし、本の最後のページを捲った。
「さて、これで最後らしいぞ、+50点、私が君の上に乗…」
 笑顔のまま凍りついたヘンリーに私も何事かと顔をあげる。待て、今解釈によってはとんでもない意味を持つことを言いかけなかっただろうか。
「ヘンリー、それは私が受け身になるということか?絶対嫌だぞ私は」
「や…違、……その、き、騎乗位ってことは、私が乗って私が動くわけ…か?」
 ヘンリーが自分から口淫をしてくれただけでも奇跡だというのに、普段は超マグロなこの男が私の上に乗って淫らに動いてあんあん喘いで一滴残らず搾り取ってくれるだと?!
興奮のあまり叫んだ言葉は途中でヘンリーの頭突きによって遮られてしまったが要するにそう言う事なんだろう、最終試練というものは。



 可哀想に、耳まで真っ赤に染まってしまった彼の狼狽がこちらにまで伝わってきて私は苦笑いを零した。
 仕方ない、彼はよく頑張ったのだからここから先は紳士的に助け船を出してやるとしようか。
「ほら、ヘンリー」
 再び氷の像のように固まってしまった彼の手を引き、座ったまま正面からその身体を抱き留めて先ずはベリーの瑞々しさを思わせる濡れた口唇を自分のそれで優しく塞いだ。
 キスで彼の気を逸らしながら、片腕を背に回し双丘の隙間に息衝くアヌスを探る。そして呼吸にあわせてほんの僅かに蠢くそこへ、つぷ、と慎重に人差し指を潜り込ませた。
「はぅッ……ん………」
 蕾の内側に隠されている傷つきやすい粘膜の壁を指の腹で宥めるように擦り、浅い部分をくちゅくちゅとかき混ぜてやると口唇を塞がれたままのヘンリーが切なげに睫毛を震わせ鳴いた。
「自分で挿れるにしても慣らしておかないと辛いだろう?」
 本来は繋がる為の機能など持ち合わせていない場所を性交に使おうというのだから、受け入れる側、ヘンリーの被る痛みは筆舌に尽くしがたいものであることは理解している。
 だから少しでもそれを軽減させる為に、下準備は念入りに行わなければならないことも重々承知していた。
 おそらく全てをヘンリーに任せたりなどしたら羞恥に耐えきれずおざなりに準備を終わらせてしまうだろうから、流血沙汰を防ぐ為にもここで私が手を抜くわけにはいかない。

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