騎乗位(ヲルヘン)3/5


「……やる、といったのはヘンリーだぞ」
「わ、分かってるよ」
 君のならば出来る、ヘンリーがそう男らしく宣言してからはや1時間が経過した。
 寝台の上で胡坐をかくようにして座る私の前に、ガチガチに身体を強張らせて正座したままの最愛の同居人は完全に固まってしまっている。
 時折覚悟を決めたようにガッと頭を垂れて私の下肢に顔を寄せては来るが、また勢いよく頭をあげての繰り返しだ。
 ああ、小さな頃はあの施設の庭にあった壊れかけたシーソーでよく遊んだな…、いや、この動きはそれよりもアレに近いかもしれない。サウスアッシュフィールドハイツの近くにある公園のベンチ、そこに座っていると
なぜか私の周りに集まってくる連中の歩く様子。ああ、あれだ。クルッポークルッポー鳴きながらあいつらよくアレで脳がシェイクされないものだ。
 暇な私はヘンリーの頭の上下運動をぼんやり眺めながらどうでもいい事に思いを馳せ溜息を落とす事しか出来ない。
 やはり、まだ普通のセックスにも慣れたとは言い切れない初心な恋人にここまでさせるのは酷なのだろう、気持ちは分かるが今日はもうこの辺で終わりにしておこうと理解のある所を見せるべ…


「そ、その、初めてだから上手く出来なくても怒らないでくれよ?」
「うわっ?!」
 物思いに耽っていたせいで、不意打ちに襲ってきた感覚に対処できず思わず裏返った声をあげてしまった。
 萎えたままの性器をぷるぷる震える手で鷲掴みにされ、頭が状況を把握できる前にあぐ、と身を屈めたヘンリーに一口で頬張られる。
「…っ?!」
 雄芯にかかるヘンリーの吐息が艶めかしい温さでねっとりと絡みついては離れていく。
 先端部分を口の中で擽り飴を舐めるみたいにもごもごと一生懸命具合を探るヘンリーに、私は素直に快感の溜息を吐きだしてしまっていた。
―――これは、思っていた以上に強烈だ。直接的に感じる刺激は下腹部を火がついたように燃え上がらせ、視覚から伝わる刺激がその衝動に更に油を注ぎこんでいく。
 堅く滾り、血管を浮かび上がらせているグロテスクなペニスを柔らかな口唇で包み込み、「これでいいのだろうか?」と訊ねるようにこちらを見上げる不安げな表情がまた堪らない。

「上手だ、…いいぞ」
 その言葉に世辞や偽りなどない。
 上擦った声が既に証明してしまっているとおり、初めて味わう強烈な快感に瞳を細めながら股間に顔を埋めるヘンリーの髪を何度も梳いてやれば、彼は嬉しげにコクンと頷いた。
 口腔の深くまで一旦呑み込んだ唾液塗れのペニスを口唇を窄めたままずるずると引き出して、先端の先走りを滲ませている穴を舌先で丁寧につつく…ヘンリーは次第に奉仕することに夢中になり、こちらの熱も否応なしに高められていく。
 奉仕をするのは初めてだ、と先程彼の口から聞いたばかりだが拙い技術と浅い経験を補っているものはやはり、直向きな一生懸命さなのだろうか。
「なぁ、ウォルター。私はちゃんと出来ているかい?」
 プールから顔を出した子供のように、ぷは、と咥えていたものをはなして息を吐き、四つ這いのままこちらに問うヘンリーの瞳には既に情欲の炎が点っているがやはりどこか不安そうに揺れている。
 彼の口淫によって完全に勃ち上がった剛直を見ればそんな事一目瞭然だろうに、そう言ってやると生娘のように頬を染め、恥ずかしくて近くでまじまじとなんかみられるかと怒られてしまった。
 …怒られるだけならまだしも、完全に臨戦態勢の息子を照れ隠しにベチンと叩かれてしまった。これには少しだけ冷や汗をかいた。

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