対面座位(ヲルヘン)3/4


「起きられるのか?…その、明日」
 普段は人の都合など碌に聞かずに纏わりついてくる癖に変な時に律儀な奴だな、と目の前の何時まで経っても不健康さが抜けない扱けた頬を軽く抓る。
 ここまでしておいてからそれを聞くかい?普通。
 ぐちゅ、ぐちゅ、と身体の一番奥深い場所から響く湿った音を聞きながら、ウォルターの頬を抓ったついでに放し際には捻りを入れてやった。
「イタタタタ、ヘンリー痛い痛い、ギブアップだ」
「余計な気を廻さないでいいよ、それよりも今は」
 流石に私だけに集中しろとは言い辛く口籠ってしまった私の腰をしっかりと掴み直されてウォルターが無言の抗議に応えるように下から力強い律動を刻んだ。
「んっ……、あ………うっん」
 背中から腰に伝い滑り落ちた汗の玉がシーツの上に小さな染みをまた一つ増やしていく。
 下からガクンと勢いよく突き上げられて、大きく仰け反った私の一度も果てていない自身も下腹を打つ勢いで震えていた。
 上体を起こしたウォルターの大腿部の上に跨るようにして正面から抱き合い、身体の奥深い部分に咥え込んでいる彼のペニスを緩急をつけて締め付ける。
 …と言っても慣れない体位に自分では受け入れることだけで精いっぱいの為、専ら動く方はウォルターに任せてしまってはいる現状だが。
 それでもウォルターの頭を掻き抱きながら縋りつき、一生懸命に腰を揺らすと私の稚拙な動きにも彼は気持ちよさそうに瞳を細めて熱い吐息を吐きだしてくれる事が堪らなく嬉しく感じられた。

「いいかい?……ウォルター、…痛くはないだろうか?」
 本来なら性交に使われる筈のない器官で交わる事、それが私の身体に酷い負担をかけているのは嫌という程身を以て知っているが、気楽なものだと思っていた相手側も実際はそうでもないらしい。
 幾度契っても決して慣れてはくれない後孔はウォルターの性器を容赦なく絞り上げ、碌に慣らさない時などは快楽よりも痛みの方が強いのだ、と言われたがこればかりはどうにもならないし責められる筋合いもない。
…が、矢張り気にかかってこうして尋ねてみれば、彼は蕩けるような笑顔のまま「最高にいい具合だ」と恥ずかしい事を堂々と口にする。
 意中の相手に悦んで貰えている、という事自体は悪くはないのだが男として其処を褒められるのはやはり、複雑な思いが拭いきれない。聞かなければよかった。
 薄く開いた口唇から零れる甘ったるい声が本当に私のものなのか、膨らみなどまるでない乳首を噛まれた時に背に走る電流のような快楽は現実のものなのか、精神と肉体が剥離してしまったような不思議な感覚は
夢に落ちていく時によく似ているが悪い気分ではない。
 ミルクを強請る赤ん坊のように、濡れた音を立てて執拗に私の胸の突起を口に含み吸い上げるウォルターの髪をぐしゃぐしゃに掻き乱しながら仰け反る。
 すると私の気が逸れるのを狙っていたかのようにまた、下からずぶりと奥まで貫かれてあられもない声をあげてしまう。
「ああぁッ………!!」
「ヘンリー、いいぞ……もっと、もっと私を欲しがってくれ」

 全部お前のものだから、望むだけ差し出そうと耳元で熱く囁くウォルターの声に昂りきった下腹がずくんと重く疼くのを感じた。
 動くたびに向かい合ったウォルターの腹で擦られている自身の先端から、触れてもいないのにとろとろと蜜が滴り落ちているのが分かる。
 ああ、何時の間に男のペニスを受け入れるだけでこんなに感じてしまうような淫らな身体に作りかえられてしまったのだろうか。
 ウォルターの熱くて堅い雄芯が私の腹の中でその大きさを増したのを感じ、それを何故か嬉しいと思う自分にひどく驚かされた。

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