ANSWER(18)


「なっ…?」

 まさか未だ喋ることが出来たは、と男が怯んだ一瞬の隙にマーカーの腰に廻されていた不埒な手を掴まれ、捻り上げられる。
「ぐぁっ!」
 ギリ、と捻り上げた腕に容赦なく力を篭めていく。
 折れようがこちらの知った事では無い、とばかりに渾身の力で締上げるマーカーに男が情けなく悲鳴を上げた。
 一瞬何が起こったのか理解できずに呆気にとられていた男達がようやく事態を理解し、一斉に銃を向けるが、それにも全く動揺を見せず四方八方から自分に照準を当てられた銃口をマーカーは寧ろ楽しげに見据える。

「敵は38、距離は約10メートル、充分に有効射程範囲内だ。お前はどう見る?」
「…ん〜 めんどくせぇのはパス。こっちにゃ、人質いるし今までの感触でこいつらの実力見た感じだとなぁ…」
 すぐ傍らから聞こえたその声色に、マーカーに腕を捻り上げられていた男がサッと青褪めた。
 まさか、と驚愕に瞳を見開いて既に事切れた筈の男を見下ろせば、血溜まりの中で倒れていた男が両腕で身体を起こし、勢いをつけてひょい、と立ち上がって見せる。
 そしてポンポンとジャケットについた埃を叩き、マーカーとぴったり背中合わせに立ち自分達に向けられた銃口をヒュー、と口笛を吹きながらあたりを見渡した。

「背後見せなきゃ、楽勝」


 その言葉にフ、と小さく笑ったマーカーに、依然として腕を捻られたままの男が、俄かに信じることが出来ない光景、甦った死人を目の当たりにしたショックを隠せずに上擦った声で喚き散らした。
「そ、そんな馬鹿な。貴様、確かにナイフで刺された筈…ッ」
 ガクガクと震えながらこちらを見上げる男に、チラリとジャケットを捲りあげウィンクをしてみせる。
「刺されたぜぇ、ンでもおかげさまで命に別状はないよん」
 だから心配無用だぜオッサンと笑う自分に、マーカーが馬鹿め、と鼻で笑った。
「引き抜く瞬間に傷口は焼いて止血してやったんだ。死ぬ筈がなかろう」
「…・・オマエ、刺されてやった俺に優しい言葉かけようって気はねぇのかよ」

「し、しかしさっきは全て計画どおりに済んだと思ったのに…、言葉も交わさずに貴様ら一体いつ、どうやって謀ったんだ」
 それでも納得いかない、と先程の余裕はどこへ行ってしまったのか無様に狼狽しながらそんなことはありえない、出来る筈がないと熱に浮かされたように繰り返す男に片眉をあげて口唇の端を吊り上げてみせた。

「おいおい、あんたらの基準で判断して貰っちゃ困るぜ。
 言葉なんか無くっても、分かり合えちまう関係って凄いと思わねぇ?」
「…・・馬鹿が」

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