ANSWER(10)


 『言葉なんか無くっても、分かり合えちまう関係って凄いと思わね?』

 『…また馬鹿の世迷言か』

 『ひっで、俺なんてお前の考えてること、目ぇ見るだけで分かるんだぜ?』

 『……………下らん』

 『下らなくねぇっしょ、ほらこっち向けってば…・お前、無愛想だけど全部目に出る
  からな。わかりやすいっちゃ、わかりやす…・っ、てめイキナリ火つけることねぇだろ!』



 嘘しか紡がない口唇ならば

 いっそ塞いでしまおうか?



 ANSWER  3 / single

 鉄格子が嵌められた高窓から差し込む三筋の光が、静かな息遣いだけが繰り返される暗い独房のような部屋に唯一の明かりを落とす。
 部屋の隅では腐食した水道の蛇口がだらだらと赤錆混じりの細い雫を垂らし続け、饐えたような臭気の中、時折りどこからか狂ったような笑い声や罵声が響き渡り、そしてまた耳が痛くなる程の静寂にかえっていく。
 並の人間がこの環境に叩き込まれれば、恐らく数日で気がおかしくなってしまうだろう。
 確かにこれは随分と手厚いもてなしだな、と相変らず自由にならない身体を背後の冷たい壁に預け、自嘲の笑みを浮かべた。
 …・感覚が未だ侵されていないのならば、もうここの場所で3度夜を数えた筈だ。

 気を失う度に脚に煮え滾る湯をかけられ、無理矢理覚醒させられたところで再び身体の内部を陵辱されるという、一体いつまで続くのかも分からない悪夢から漸く醒めてみれば襤褸雑巾同然に冷たいコンクリートに囲まれた狭い空間に打ち捨てられていた。
 名もないガンマ団の一兵士に対する持て成しにしてはこれでも随分と上等な扱いなのだろう。
 用が済んだ後に、脳天を撃ち抜かれて殺されていないだけでも驚くべきことだ。
 今こうやって生かされているということは、未だ自分に何らかの利用価値が残っているからなのだろうか。

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