毒(ハレマカ)1


どうだ、と訊ねられて何がですか、とそっけなく答えを返した己に、主はひどく驚いた顔をした後でにやりと口唇の端を吊り上げ皮肉な笑みを浮かべてみせた。


 恍けたつもりはない。只、今この場に不釣合いな無粋極まりない言葉を受け流したかっただけ。
 一糸纏わぬ姿で絡み合い、上司の逞しい腰を両脚で挟み込むように跨っている己に不躾な言葉を投げかけた張本人は、片手で顔を覆いながらクックと楽しげに笑いを噛み殺している。

 ―――不快だ。

 そう思ったと同時に頭を擡げたハーレムのペニスを掴み、その上に何の前戯もなしに腰を降ろしてやった。
 そそり立ったペニスをずるりと呑み込み、手荒に己の体内に迎え入れる。
 案の定、自ずと濡れることをしない内壁がぎちりと熱塊を咥え込み、ふたつの身体が互いを拒み、力づくの交合に節々が悲鳴をあげる痛みが全身を突き抜けていく。
 勢いよく咥え込んでやったつもりだったが矢張り滑り無しに最奥までは届かなかったらしい。半分ほど、呑み込んだ状態で引き攣れた内壁にそれ以上の結合を塞き止められ、チッと小さく舌打ちをした後で、先程まで余裕の笑みを浮かべていた上司の顔を涼しげな顔で覗き込んだ。
「いかがですか」
「……・ッッッ、イッ…テエエ…・、馬鹿野郎!擦り切れたらどうすんだマーカー!!」
 パンパンとシーツをタップしながらギブアップを示し、先の余裕気な表情は何処へやらの必死の形相で歯を食い縛る最愛の男に知らず知らずのうちに口唇の端に笑みが浮かぶ。
 鍛えようの無い其処が己の体内に容赦なく食い締められ、普段なら快楽を齎す筈のその行為に少しばかり失言を咎める意味合いを含ませてやっただけ。
 粘膜が引き攣れる激痛を感じているのはこちらとて同じなのだが、滅多に見る事の出来ない主のその表情に痛みも忘れ見蕩れるように身を乗り出した。
 中途半端に繋がった下半身が不規則な収縮を繰り返し異物の侵入を退けようと蠢くのが分かる。
 強引に咥えたそれが抜けぬよう、痛みで幾分か萎えてしまった主のペニスに片手を添えながらギシリと寝台を軋ませた。


「…・、くぅ…ッ ハッ、随分と余裕のツラしてるじゃねぇかマーカー。…よくもやりやがったな」
「それはもう、隊長のおかげで痛みには随分と耐性がつきましたから」
 この程度の痛みは今までに強姦紛いに犯された幾度ものセックスに比べればどうという程の物ではない。
己が主導権を握れるなど滅多にない機会、もう少しばかり、このデリカシーのない上司に痛い目をみて頂こうかと繋がったままの腰を揺らせば再び情けない悲鳴があがった。
「いでで!やめ、いい加減に機嫌直しやがれ。俺が悪かった、マーカー!」
 血が流れる程の痛みでもない悪戯に、幼子のように脚をばたつかせる上司に跨ったまま、振動で少しずつ沈む自分の身体が受け止める熱を帯びた芯に猫の様な瞳を細め熱い吐息を吐き出す。

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