FAKER(ハレマカ)4


-H-



「お、いたいた。マーカー、オメーまたロッドと一悶着やらかしたんだってな」

 声をかければこちらを振り返り、ニコリともせずに冷たい目で見据える。おいおい、それが上司に対する目つきか?と内心ほくそえみながら片手を挙げて狭い通路で立ち止まった可愛い部下に歩み寄る。
 薄い口唇を一文字に引き結んだまま、ペコリと頭を下げて礼を示す彼を壁に押し遣るように立てば、いつもどおりの無表情に少しばかりの困惑が浮かんだ。
 人形のように表情を変えないこの男が、唯一人並の感情を垣間見せる相手が同じく自分の部下である軽薄なイタリア人だと気付いた時には内心驚いたが、彼等の関係に口出しをするつもりは無かった。
 命令に逆らわず任務さえ予定どおりにこなしてくれるのであれば、社内恋愛なり何なり好きにすればいい。
それに、一筋縄ではいかない彼等の行く末を見守るのもなかなか楽しそうだと傍観を決め込んでいた・・が、今回ばかりは少しちょっかいを、いや、お灸を据えてやろうかと思い立った訳であり。
「おっと、まあ待てや。説教するつもりはねえよ。オメーには別件で用事があってな」
 壁際に押し付けられるように逃げ道を塞がれながらも、どうにか自分の脇をすり抜けて逃げ出そうと、視線が語っているマーカーにニヤリと微笑んでみせれば心底嫌そうな顔で上目遣いに窺われた。
 「・・・何でしょうか」
 きめ細かい肌に艶やかな黒髪、本当にキレイな顔してやがるな、と内心感心しながら彼の頬を撫であげてやれば尻尾を踏まれた猫のようにヒッ、と一瞬背筋を震わせて切れ長の瞳を見開き、益々困惑に揺れた瞳で訝しげに見上げてくる。
 面白い。なかなか、これは思ったよりも楽しめそうだ。

「いやよ、最近なかなか遊ぶ暇がなくってよ・・・めんどくせぇから手近で済ませちまおうと思ってな」
 スルリとレザースーツから覗く胸元に手を忍ばせて、反射的に逃げうつ身体をもう片方の腕で拘束した。
 抱きとめるような体勢で無遠慮に胸を撫で回しそのまま耳元に口唇を押し当て、舌先で小さな穴を突付きながらねっとりと舐め上げる。
「お前なら分かんだろ?俺が言ってる意味がよ」
 ジュ、と唾液の音をたてて耳を嬲れば小さく声を上げて、マーカーの手が胸を弄んでいる手にそえられ、弱々しいながら拒絶を示してくる。
「隊長・・・」
 まさか逆らう気ではないだろう?それはそれで楽しいことになりそうだが。
 随分と口説き甲斐のあるヤツだ、と自然に口唇に笑みが浮かぶ。こうでなくては、面白くない。
「るせぇな、文句あんのかァ? それじゃ、言い方変えてやろうか?」
 信じられないものを見る目で、こちらを凝視するマーカーの耳元にもう一度口唇を寄せ低い声で囁く。
「俺の為に脚開くのが今夜のお前の役目なんだよ。言っておくが、命令だぜこれは」
 

 イイカオするじゃねぇか。・・・・こうでなくては、仕置きにならないからな。

- 71 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -