FAKER(ハレマカ)3


-R-



「イテテテ、思い切りやりやがって・・・」
 殴られ、燃やされ、見かねたGが間に入ってくれたおかげで漸く解放されたのだがそこかしこに負った傷がズキズキと疼き、自分で傷薬を塗りこみながら子供のようにプウッと頬を膨らませる。
 確かに非は自分にある、それは認めるがここまでの仕打ちを受けることは納得できない。
 事の発端は、何時もどおり邪険にされながらもなんとかマーカーの身体を抱き締めることに成功し、そのまま熱い口付けを交わそうとした時に彼が自分のシャツの残り香に気付いてしまったことが原因だった。
 甘く、絡みつくような香水の香り。
 普段自分が愛用しているものとは明らかに違うその香りは、昨夜こっそり船を抜け出して街で抱いた女が纏っていた匂いで、その香りに気付いた瞬間鈍いマーカーの中でもどういった経過でその香りが衣服に付着したのか理解出来たらしい。
 その後はどんなに土下座して謝ろうとも延々と無視を貫かれ、機嫌を直して貰おうとあの手この手で攻めたことは全て裏目に出てしまい、とうとう我慢の限界を振り切ったのかいきなり火柱を上げてキれたマーカーから命からがら逃げる羽目になったのだ。

「話ぐらい聞いてくれたっていいじゃねぇかよ・・・可愛くねぇな」
 誰もいない自室でぼやきながら項垂れる。言い訳にもならないだろうが、女を買いに出かけたのだって元はといえばマーカーのせいなのだ。
 ここ数日間指一本触れさせてくれない恋人に若い身体が我慢出来る筈もなく、それでも暫くは空想の中の彼を想って自慰を繰り返してはいたのだが・・・そんな自分に虚しさを覚え、仕方なく皆が寝静まってからこっそりと抜け出して、このざまである。
 愛している相手だからこそ触れたい、口付けを交わしたい、抱き合い互いの想いを確認し合いたい。
 そんな純粋な想いをどうして彼は分かってくれないのだろうか。第一、昨夜抱いた女とはキスもしていない上に最初から最後までずっと瞳を閉じたままだった。
 こんなことは都合のいい言い訳としか受け取っては貰えないだろうが、行為自体は彼を裏切るものだったとしても心は決して裏切ってはいない。
「はぁぁぁああ・・・」
 これからどうしようか、と溜息をつき、肩をがっくり落とす。
 今すぐに会いに行ってもどうせ、彼の怒りを増幅させるだけで火に油を注ぐ結果になるのは目に見えている。仕方ない、もう少し経ってから行くかと火傷の痕を擦りながらベッドに横になった。

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