FAKER(ハレマカ)2




「た、隊長〜ッ」
 涙と鼻水でぐしゃぐしゃに濡れた顔を床に擦り付けるように土下座を繰り返す自分に、流石に面食らったのかハーレム隊長は咥えていた煙草をポトリと落としてきょとんとした顔のままこちらを見ている。
 そして何時の間にGに連れ出されたのか、場所を変えて相変らず大声で怒鳴りあっているロッドとマーカーにやれやれと小首を傾げ、死刑宣告を待つように床に這い蹲る自分の髪を鷲掴みにして引き上げ目の前でニヤリと嬉しそうな笑みを浮かべた。
「おい、あの騒ぎの原因は一体なんだ?」
 前髪を掴まれた痛みに顔を歪め、しゃくり上げながら自分にはわからないと首を横に振る。
 不満げに細められた獅子舞の瞳が役立たず、と言っているが、分からないものは仕方が無い。それよりも思い切り力を篭めて首を引き上げられているせいで、ひどく息が苦しい。
 死刑執行の前に尋問の時点で殺されるのか俺、と息苦しさの中走馬灯のように幼い頃の思い出が脳裏に浮かんでは消える。まずい、これ以上締められたら冗談では済まなくなる。
「たい・・ちょ、苦し・・・・・ッ」
「お、わりいな」
 ぼろぼろと涙を零しながらもがく自分にようやく気付きパッと鷲掴みにしていた前髪を解放し、バタンと倒れる部下には少しの気遣いも見せずになにやら考え込む隊長に、再び嫌な予感が胸を過ぎる。
 案の定、悪魔の化身のような顔で笑みを浮かべた後、倒れ伏す自分に猫撫で声で話し掛けてくる。
「なぁ、リキッド。ヤツらのくだらねえ揉め事のせいで、大切な灰皿と可愛い部下のお前がこんなひでぇ目に合わされたんだ。喧嘩両成敗ってのが筋だよなァ?」
 何を考えているのかヒヒヒヒ、と不気味に笑う隊長に背中を冷や汗が伝う。確かにそのとおりなのだが少なくとも、可愛い部下、である自分をひどい目にあわせたのはあの2人ではなく他ならぬ隊長だ。
 しかしそれを突っ込み、指摘するには今の自分は体力が減りすぎている。この世の別れと引き換えにまで突っ込むことではないだろう、と半ば投げやりにウンウンと伏せたまま頷いてみせた。
 その仕草にヨシッ、と大声で応え仰向けに倒れた自分の背中を叩き、軽い足取りでキッチンを後にする獅子舞の姿を薄れゆく意識の中で見つめ、ガクリとそのまま倒れ伏した。


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