▲咎 獣×ヘン(1)


※以下の文章には、クリーチャー×ヘンリーの描写を含みます。
 苦手な方はどうぞここでおひき返し下さい












 ハ、ハ、と忙しなくそして荒く、複数の獣の吐息が交じりあう淫猥な音に私は瞳を細めた。

 所々、地面にはじっとりとした泥濘が目立つ鬱蒼とした夜の森。
 私が幼い日を過ごした孤児院の森はあの頃と変わらず薄気味の悪い雰囲気を漂わせていた。
 ぽつりぽつりと疎らに外灯が立ち並ぶ舗装されていない道も、作業途中で放棄されあちこち赤い鉄錆だらけになってしまった工事現場も、何も変わらない。
 そういえばこの場所を私は酷く恐れていたな、と記憶を辿りながら鬱蒼と生い茂った木々を眺めた。
 何も知らなかった、5つになるかならないかぐらいだったあの頃はただ単純に真夜中森の中から聞こえてくるコヨーテの鳴き声を恐ろしく感じていたのだが、今こうして大人になってから再び森に足を踏み入れてみると、森全体を包みこむような何とも言えない薄気味の悪さを生んでいたものはこの場所に溜まり淀んだ悪意だったのではないか、と私には思えた。
 教団の大人達の気分次第で虐待される子供の心が生んだ恐怖心と、教えに傾倒した大人たちの歪んだ信仰心、信仰による魂の救いよりもドラッグを売買して容易に得られる目先の儲けにとり憑かれた愚者達の膨れ上がった欲望など
…様々な負の感情が膿のように溜まり固まって、内部からゆるゆると腐った結果がこのなんともいえない嫌な淀みの空間を作り出してしまったのかもしれない。

 暫し物思いに耽った後で、思い出したように傍らに視線を戻す。
 ぐちゅ、ぐちゅと繰り返し奏でられる湿った音と、獣の唸り声に交じって聞こえる唯一の”ヒト”の吐息は未だ意味を為さない言葉を吐き出すばかりで陥落の言葉を紡ごうとはしない。
 頼りない見た目とは裏腹になんとも強情な男だ、ヘンリー・タウンゼント。
 現実世界での犬よりも一回り大きな体躯をした異形の獣の群れに囲まれ、人の身でありながら地面に四つ這いに押し付けられているその無様な姿。
 まるで雌犬のように扱われ、その剥き出しの足の狭間に赤黒いグロテスクな獣のペニスを咥え込まされている今の姿を是非とも鏡でみせてやりたいぐらいだ。
 穢れなど全く知らないとでもいうように普段澄ましている横顔は、今や涙と涎に塗れて酷い有様、腹も尻も化け物犬の垂らした唾液と精液とでぐちゃぐちゃに濡れている。
 はじめのうちはそれでも抵抗を試みたものだから、ヤツらは往生際の悪い獲物に焦れ、大人しくさせるために手荒な手段をとってしまったらしい。
 ああ、所詮獣だ。
 あんなにも綺麗だったヘンリーの肌を引っかき傷と噛み傷だらけにしてしまうとはなんと勿体ない事をする。

 仲間の数頭が狂宴の周りをぐるりと囲んでいる為に逃げようにも逃げられず、悪足掻きをした末にとうとう獣のペニスを乾いたままのアヌスにぶち込まれて絶望に啼いた彼の声は絶品だった。

 背に圧し掛かる獣の重さに苦しげに呻く彼の声も、支配者である雄犬の興奮を煽るだけの要素でしかない。
 雌犬にそうするように、ヘンリーの腰を両の前足でしっかり押さえつけたまま激しく腰を打ち付けて只管、生殖の欲を満たそうとしている。
 もっとも、悪夢の中だけに棲むこいつらに生殖の意味があるのかは疑問だが、「食べる」「狩る」と同じようにこの行為も腐った脳の片隅に本能が焼きついているだけに過ぎないのかもしれない。


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