100 question ヲルヘン(1)


※「カップリングなりきり100の質問」さんから質問を頂いて参りました







「…何を熱心にみているんだい?」

リビングのテーブルに広げてある折り目のついたA3サイズの紙。
先程から鉛筆を咥えて、それと睨めっこした儘ウーウーと唸っている幼きウォルターの様子を不思議に思い、彼の背後からヘンリー・タウンゼントはひょいと覗き込んだ。
ヘンリー・タウンゼント、…この広いアメリカ合衆国でここ百年に生きた人間の中で恐らく最も不幸な目にあった男。
彼は理不尽な異変の解決後も結局部屋に居着いてしまった居候達に頭を抱え、さてどうしたものかと悩んだ末に
可愛らしい幼子の姿をしたウォルターには今からでも人並みの教育と友人を、とサウスアッシュフィールドハイツ近くの真っ当な児童施設に通わせることにし、
可愛げのない方のウォルターには働かざる者食うべからずの掟に従いアルバイトの仕事を与える事にしたのだ。

教団が運営していた怪しげな施設を思い出すのか最初は渋っていた幼きウォルターだったがすぐに新しい環境に慣れ、先生が僕の絵を褒めてくれただの
可愛い女の子の友達が出来ただの興奮気味に報告してくれていたのだがここにきて何かトラブルでもあったのだろうか?
慌てて紙を隠そうとする幼きウォルターの小さな頭に手をあてて、見せてごらんと優しく微笑む。
そして渋々と差し出されたそれに印字してあった内容に、彼が小さな胸を痛めていた理由を知りううんと言葉に詰まってしまった。
幾つかの項目に対し両親が答えを返す形の宿題…狂った世界を生み出す程に母を愛し父を憎んでいた彼にとってこのプリントは酷だろうと唸るヘンリーのさらに背後から
青いコートに包まれた腕がぬうっと伸ばされ薄紙を奪い取る。
「ふぅむ……これは…」
「帰ってきたらただいま位言ってくれよウォルター…心臓に悪い」
「それはすまなかった、一つしかない心臓は大切にしろよヘンリー」
深い意味はないのだろうが彼が言うと洒落にならないなと眉間に皺を寄せ、アルバイトから帰ってきたウォルターにコーヒーを淹れる為腰をあげキッチンへと向かう。
そしてウォルターが幼きウォルターにプリントを戻し、何やら内緒話をしている姿に悪寒を感じながら三つのカップと牛乳を持ち、彼らのもとに戻ってきた。
ウォルターにはコーヒーを、幼きウォルターにはミルクを手渡し坐り直した所で嫌な予感は的中、早速、とばかりに身を乗り出した幼きウォルターに切りだされた。





幼「ええと、まず最初はあなたの名前を教えてください だって!ヘンリー」
W「ウォルター・サリバンと呼ばれているが残念ながら親に与えられた正式な名前ではない」
H「…………」
W「どうしたヘンリー、お前も名無しのスミスではあるまい」
H「……いや、私達が幼きウォルターの宿題の回答をして良いものかと…色々な意味で」
W「薄情な事を言うな、宿題は「おとうさん、おかあさんへの質問」だろう。私だけでも、お前だけでも不十分な回答になる」
H「二人合わせても充分な回答にはならない気がするのだが…そうだ、アイリーンに…」
W「はっきりしない男だ、ヘンリー・サリバンとでも書いておけ」
H「書かないでくれよ!」

幼「次は、年齢…だって」
W「享年24歳だ」
H「ウォルター、そこは書かなくていいから…うん、二問目から大問題になるから」

幼「えーと、じゃあ次は性別!」
H「男だよ、勿論」
W「男だな、無論」

幼「あなたの性格は?だって」
W「普通だな」
H「何を考えているか分からないとはよく言われるけれども…あとウォルター、君にとっての普通の定義は一体何なんだい」
W「ならば中の上だな」
H(余計分かり辛くなった…)

幼「相手の性格は?」
W「実に興味深い、折り畳んだ冷凍パイシートのような男だ」
H「……?どういう譬えだいそれ。ウォルターは…そうだな、素直な所だけは良いんじゃないかな」
幼「ねぇ、ヘンリーじゃあ僕は?」
H「君も素直で優しくてとても可愛いよウォルター」
W「…なんだ幼きウォルター、その勝ち誇ったような顔は」

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