▲train ヲルヘン(3)


「………ぐっ?!」
 突如下肢から頭のてっぺんまで突き抜けるような強烈な刺激に見舞われ、訳も分からず視線を下に落として私は自分の目を疑った。
 いつの間にか私のコートの下に潜り込んでいたヘンリーの掌がしっかりと男の急所を掴んでいるのだ。
 尻や腰を掠め触っていたという痴女どころの話ではない、表からはコートで隠れてはいるが其処は流石にまずいだろうと視線で訴える私にもヘンリーは冷たい視線を向けたまま指先をやわやわと蠢かせ布越しに煽りを入れてくる。 
「ヘ、ヘンリー 一体何を…?!」
「妬いた、って言えば満足か?ウォルター」
「…?!」
 じとりとこちらを睨み付けるヘンリーは私から視線を外さないまま下肢を、直接的にいえばペニスの根本から睾丸までをがっしり片手でホールドしたまま挑発するようにずずいと顔を寄せてきた。
「私が今何を考えていると思う?」
「お、怒ってる。無茶苦茶怒ってる。私が悪かった、ヘンリー頼むからこれ以上は…」
 銃口をこめかみにあてられるのと急所を捻られる恐怖に耐えるのとでは果たしてどちらがより重い精神的ストレスを被り続けるのだろうか。
 握り潰されたら洒落にならないぞと青褪める私にくすりと笑みを浮かべヘンリーは電車の揺れに重心を崩したふりをして私の肩に頭を預け、首筋に口唇を押し当ててきた。

「君のコレで私の中…、思い切り掻き回して欲しいよ…」
 吐息混じりで熱く囁かれたこの声は紛れも無くヘンリー自身のものなのだが、…流石に幻聴かと自分の耳を疑った。
 あの堅物が満員電車の中で私の下肢を撫で上げながらこんな卑猥なおねだりをする筈がない。そんな筈がない…が、それならば先程からペニスを擽っているこのもどかしい愛撫はどう説明を付ければ良いのだろう。
「なぁ…欲しくて堪らないんだ、ウォルター。今すぐ君に抱かれたくて疼いて…どうにかなりそうだ」
 根本から先端に向かいその形を確かめるように丁寧に撫でられると流石に半信半疑だった息子もびくんと頭を擡げてしまう、悪戯というレベルではない完全に本気モードの手淫に対してはこれが正常な反応なのだが…
場所が場所なのでこれ以上の膨張変化は物凄く宜しくない、顔を赤くしたり青褪めたりリトマス試験紙の如くあたふたする私にヘンリーは満足そうに笑い、そして。
「っ……?!」
「…分かったらさっさと寄り道せずに帰ってくる事。私は先に戻っているよウォルター」

 布越しに扱かれ卑猥な言葉を囁かれ、…情けなくも完全に前屈みでしか歩けない状態まで追いこまれてしまった私を冷たく一瞥すると、ヘンリーは開いた扉から一人で先にホームに降りさっさと改札に向かい歩いていってしまった。
 何時の間にサウスアッシュフィールドの駅に着いていたのだろうか、慌てて彼の後を追おうとするが何しろこんな状態ではまともに歩くことすら困難で、簡単に彼の姿を人混みに阻まれ見失ってしまった。
 もう此処まで来れば後は階段を上がりアパートに戻るだけなのだがその僅かな距離が死ぬほど辛い、完全にしてやられた…と内股で眉間に指をあて赤い顔の儘溜息を吐く超不審人物な私を、すれ違った老婦人が不思議そうな顔をして振り返り首を傾げていた。
 …覚えていろヘンリー・タウンゼント、この燻った熱、きっちりとその身体で鎮めさせて貰うからな。

 コートの下で大変な事になっている息子を宥めながら家鴨のような足取りで歩く私の姿を想像して噴出しているであろう彼に心の中で中指を立て、口唇を噛みながら密かに3倍返しの報復を心に誓うのだった。





thank you for くぜ様 9000 hit
【コメディ】【R15】
大変お待たせいたしました、何だか物凄くアレなプレイになってしまいましたが…!(土下座)
リクエストを頂き「そういえば…」とR15とR18の差に悩みましたが結局本番をしてなければ15禁?という結果で脳内会議は落ち付きました。世間一般の認識と大幅にずれていたら申し訳ございません!
くぜ様本当にどうもありがとうございました。これからもヲルヘン頑張ります(*´∇`*)

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