sick ヲルヘン(5)


=Walter

「あー……えー…すまない、ヘンリー。本当に私のせいだったらしい」
 翌日、すっかり深刻な症状から回復したヘンリーが未だぐしゃぐしゃに乱れた寝台の上、目のやり場に困る格好でぽかんと呆けたまま私を見上げている。
 恐らく今の謝罪の言葉の半分も耳に入っていないのだろうが無理も無い、もっと、もっとと強請られるが儘に結局朝まで離してやらなかったのだから。…病み上がりというよりも闘病中の人間に無体を働いてしまった事に対しては弁解出来ない。
 決まり悪く後頭部を掻きながら頭を下げる私にもヘンリーは依然話が呑み込めないらしく首を傾げた儘戻しもしない、仕方ないのであまり想い人に告白したい類の内容ではなかったのだが順を追って説明してやる事にした。
「昨日、私が出掛けた後で例の部屋に入ったのだろう?」
「あ…うん、そう言われてみれば」
 暫くビニールとベニヤ板で仮留めするだけに放置してあったのだが、休日だしひとつ掃除でもしてみるか、と思い立ってあの儀式を行った隠し部屋に入った。そう頷くヘンリーの姿に、額に手を当てやはりなと大きな溜息を吐いた。
 それがどうしたんだ?と目で問うヘンリーにあー。うー。と口籠った後で憶測から導き出した可能性の一つを提示する。
「ファラオの呪いの話は知っているか?」
「ああ…あの、封印されていた墓に触れた人間が次々と謎の死をってやつかい…………あ」
 ファラオの譬えに『有限の世界の王如きが何を言っている』というような目で私を見ていたヘンリーが突然ポン、と手を叩いて顔を上げた。流石にここまでヒントを出せば彼も合点がいったのだろう、…しかしながら失礼な反応だ。
「ウィルス…?か?」
「恐らく。10年間死体と薬品と埃を密閉していた部屋だ…身体に悪い成分が残っていたとしても何ら不思議ではない」
 これならば他に例を見ない、ヘンリーの身体を蝕んだ謎の症状の説明もつく…ような気がする。
 何分にしても、原因はこちらにあるのだからと申し訳なさで縮こまる私に、ヘンリーは盛大に噴出し肩を震わせて「散々な目にあった」とちっともそんな目にあわされた人間らしからぬ顔で笑って見せた。
「…怒ってないのか?」
「いいよ、今更だし」


 何が今更なのだ?と問う私にヘンリーは腹が満たされた子犬のような表情を浮かべ、「君が齎した病になんて私はとっくの昔に落ちている」と昨夜から飽きる事無く貪り続けた口唇に甘く蕩ける言の葉を添えたのだ。



 ――Love sick




thank you for wabill様 8001 hit
「何かとヘンリーの世話を焼きたがるウォルター」
私が憧れという単純な言葉だけでは表現し切れない程多大な影響を受け、お世話になっているヲルヘンPCサイトの管理人様より有難くも頂戴したお題ですm(__)m
何時もwabillさんの何気ない呟きにどれだけの萌と新しい世界を頂いているかやはりこちらも言葉にし尽くすのは難しい。
本当に頭が上がりません…!、どうもありがとうございました!



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