▲Flower ヲルヘン(2)
「あぅッ……!!」
浮いた鎖骨に思い切り噛み付き、床に滴る血と同じ色の鬱血の痕を彼の胸に散らし刻んでいく。
口付けの雨を降らせながら同時に、閉じられた世界で異形の化物達につけられたと思われる傷跡を丁寧に舌先で舐め上げてやると、噛み殺しきれない喘ぎ声がヘンリーの口唇から洩れて静寂を淫らに揺らした。
痛みには大層我慢強いようだがこちらの方はどうなのだろうか？
傷を舐めながら小さな胸の尖りに触れ、そのままそれを口内に含み赤ん坊のように強く吸い上げてやった。
「……ッ、ああ………やめ、やめろ」
素肌に散らされた口付けの痕と同じ色に染まった突起を、ぷくりと勃ちあがるまで執拗に舐めしゃぶり舌先での責めを続ける。同時に、抱き込むように背中に廻した片腕で腰の下、肉の柔らかい双丘の狭間をすうっと撫で下ろした。
「ひっ…」
指先を忍ばせ位置を確かめるように蠢かす。漸く探り当てた其処へと、骨張った人差し指を潜り込ませようとするがきつく窄まった内壁に押し返されてしまい第一関節までも入らない。
「痛、やめろ、や……」
何度か蕾を突いてはみるが頑なに拒み続ける身体に一旦指を抜き去った。強引に奥まで暴いてやってもよかったが恐らくそのやり方ではヘンリーを壊す事は出来ないのだろう。
「慣らさないと私が入れないようだな、ヘンリー。お前のナカは」
赤く染まった耳朶を食みながら囁き、解放したばかりの後孔の入り口をトントンと指先で悪戯に叩いてやると強張った彼の身体がビクンと大きく震えるのが分かった。
「ん…ああっ……い…」
うつ伏せに押さえ込まれ、腰だけを高く抱え上げられて犬畜生のような格好でシーツに顔を埋めたヘンリーが上げる籠った喘ぎ声はまるで嗚咽のように聞こえた。
頑なな後孔を解すようにキュっと閉じられた蕾を直接口唇でなぞり、舌を捻じ込み内部を唾液で湿らせながら同時に濡らした指を挿し入れゆっくりと慣らしていく。
戦慄く秘所、内側の襞一枚一枚を確かめるように辿り、本来排泄の役割しか持たない器官を自ら雄の欲を迎合する性器に作り替えていく。
恐らく今、死んでしまいたい程の屈辱感に苛まれているであろう彼は先程から背後の私を見ようともしない。私にいいように弄ばれている姿はこんなにも魅力的なのにヘンリーの表情が見られないのは少しだけ残念だ。
しかしどんなに嫌がる素振りをみせても勃ち上がったペニスとその先端から蜜のように零れ落ちる体液は誤魔化し様がないだろう。
ヘンリーの体液に塗れた掌を彼の目の前に翳し、見せつけるように濡れ光る指先を動かしてやると彼は一瞬だけ泣きそうに顔を歪め口唇を強く噛み俯いてしまった。
「嫌ではないようだな、こちらは私に触って欲しくて我慢がきかない様子だ」
鵐に濡れる掌を見せつけるようにぺロリと舐めて、悔しげに口唇を噛むヘンリーの姿に満足し私は行為を再開させた。
何度も何度も、強引に指を捻じ込んで掻き回した蕾は僅かにその朱鷺色の窄まりを綻ばせ、異物を自ら身体の奥へ招き入れるようにヒクヒク微かな煽動を繰り返すようになった。
腰だけを高く上げて男の指を咥え込み、勃ち上がったペニスを宥めるすべもないまま苦悶の表情を浮かべるヘンリーに征服欲が酷く刺激され口内に溢れる唾液を音を立てて啜った。
見ろ、私だってこうして生きたままの花を手に入れられるのだ。
精神を汚泥のように蝕む独占欲を完全に満たす迄には至らなかったが手の中にある彼の存在に私は酷く高揚した。
「……ん、あああッ、や…め ひッ」
熱く泥濘むヘンリーの体内に、指を三本突き入れ抉るように掻き回す。縁は裂ける事なく柔らかく拡がり具合の良い性器としての役目を果たしてくれている。
繰り返される挿入にあれほど頑なだった蕾はこんなにも柔らかく解され、指を呑み込まされることをまるで嬉しがるようにグチュグチュと淫猥な声で鳴いているではないか。
限界まで昂ってしまった彼のペニスを後ろから強く握り込み、扱いてやるとその動きに合わせるようにヘンリーの腰が揺らめいた。
「まさか犯されて感じてしまっているのか？…ヘンリー」
薄い耳朶を甘噛みしながら囁く屈辱的な言葉にも、彼は息を詰めるばかりで返事は何も返ってこなかった。
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