▲戒 ヲルヘン(2)


「今日はお前の為に特別な遊び相手を用意してやったよ。前も随分と楽しんでいたようだしな」
 私の言葉に呼応するように陽炎の如く暗がりからゆらりと現れた異形の体躯。
 白く乾いて引き攣れた、異臭の漂う人の生皮を頭からすっぽり被っているように見えるグロテスクな猿は興味深いことに他の化物共よりも格段に知能が高い。
 以前スニファードッグを嗾けた時にもそうだったがこの悪夢を棲み処ににしている獣達は本能が生殖行為を覚えているらしい。
 恐らく仲間内でも行われているのだろうが私にとってそちらはどうでもいい事であり、大事なのは「ヘンリーが獣と交わる行為に激しく嫌悪を抱いている」その事だけだった。
 こいつらがヘンリーに触れ、辱めることで彼の精神をじわじわと疲弊させてくれるならそれだけで充分だった。


 両腕は相変わらず拘束したまま、胸元を肌蹴させ、両足を大きく開かせた状態で固定すればこちらからは彼が見られて羞恥を覚える場所全てが露になる。
 萎えたままの性器も、その下に続く本来ならば排泄にしか使わない筈の場所も、全て。
 取り払った邪魔なジーンズは下着と共に汚れたリノリウムの床に無造作に投げ捨てられ、今は下肢を覆っているものなど何もない。
 いい格好だ、彼の正面の回転椅子に腰かけてヒュウ、と口笛を吹けばその音が合図のように、猿は血と泥に汚れた手を嬉々としてヘンリーの身体へと伸ばし、彼は苦渋と恥辱に塗れた呻き声をあげた。

 先を争ってヘンリーの体内に押し入り射精の欲を満たそうとしていた犬の時と違っていたのは、ガムヘッドが最も興味を示したのは私が奪い取って戯れに並べておいた彼の所持していた道具の方で、
幾度もそれらを指さし私に許可を求めるような仕草を見せてきた。
 何だ?手斧で殴られた仲間の仕返しに凶器で無抵抗のヘンリーを切り刻みたいのだろうか、と私は訝しげに眉をひそめたがどうやらそういうわけではなさそうだ。
 戯れに与えた武器を狂人のように振り回す事が出来る脳を持つ彼等の興味を惹いたものはヘンリーが所持していた小さなドリンクの瓶であり、未知のものに対するその純粋な好奇心に思わず失笑が零れてしまった。


「使い方を教えてやろうか」
 立ち上がり細身の瓶を1本取り上げ、中の液体を揺らしながらヘンリーに歩み寄る私をガムヘッドは興味深そうに見詰めている。
「ッ…止めろ」
 正面に屈み、尻の片側を乱暴に愛撫し押し開くように指を添えれば彼の白い臀部が歪な形にゆがんだ。
 引き攣れて内部の桃色の粘膜を見せている淫猥なアヌスに、瓶の口をぴたりと押し当ててやると流石にヘンリーの罵声は半ば悲鳴染みたものに変わった。
「どうかしてる、止めてくれ、待て、待っ…」
 鼓膜に心地よく響く制止の声など意にも介さず、この太さなら内部を傷つけることもないだろうと一突きで奥まで穿ってやると彼の身体は大きくビクン、と痙攣し見開いた瞳の端からはつうと恐らく生理的な涙が伝い落ちる。
 濡れていない、慣らしていないアヌスは異物を拒むようにきゅ、と入口を食い締めたが構わず力尽くで貫いてやった。
「うぁ、あああ…ああぁあっ!!」
 …大袈裟な、犬のペニスよりも随分と細いものだぞ?間近で彼の顔を覗き込みながらキツく締め付けてくるナカでそのまま軽く抜き差しを繰り返せば異物が体内を抉る度に今度はすすり泣きに似た上擦った声をあげる。
 いい声だ、泣きじゃくる子供のようなその声をもっと聴かせて欲しい。

 異物で犯され虚ろな目に涙を溜めながら屈辱に口唇を震わせるヘンリーに私は満足して、アヌスに瓶を咥え込んだままの彼の髪に優しく口付けを落とし耳を食んだ。


→続

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