『開かずの懺悔室』

2009/11/17 11:28

古い教会の礼拝堂、その奥まった場所に

『彼』の部屋はある。

その部屋がいつから使われていないのか

何故、扉が開かないのか

それは誰かが鍵を失したのかも知れないし

それは単に建て付けが悪いのかも知れない

しかし、常に鎧戸で閉ざされた窓や

漆喰の剥がれた壁

扉の前の廊下はギーギーと音を立てる

その古い部屋に注意を払う信者はいない

だから『彼』は其処を寝床としていた

そしてその寝台にはひとりの少女がいる

3日前に『新生』したばかりの吸血鬼が

普通、人間が吸血鬼に『新生』するとき

一晩あれば身体の構造が変化する

しかし少女はもう3日も目覚めない。

『彼』は焦りを感じていた。

――……死んではいない

ゆっくりではあるが鼓動は聴こえ

酷く深く静かではあるが呼吸もしている

「一体、何に焦っているんだ私は」

あの日、彼の身体をずっと苛んでいた

吸血の衝動は収まった

久しく心静かな夜を与えてくれた少女

しかし

あの日以来、吸血衝動よりも激しい

恐ろしさの塊のような焦燥感に苛まれる

一体、何が恐ろしいのかが分からない

そっと、少女の白い頬に手を伸ばす

自分よりも尚、冷たい身体に背中が粟立つ



「早く…目覚めてくれ」

その懇願は酷く弱々しいものだった。







◆hachiko様宅の吸血鬼話に触発されて◆
衝動のまま書いてしまった…。


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