【04 お祭り】
2010/02/17 07:44
『嗚呼、我が王。
わたくしは貴方を愛せないと言ったはず』
粛々と進む舞台
それを大勢の観衆と共に見守りながら
ヴィンセントは苦笑していた。
(なにが大根役者だ)
「おー、わがおー、
あたしはあーたをあいせない〜♪」
突飛なく聞こえてきた調子外れの声。
聞けば新年のウータイ地区伝統の舞台、
その主役の姫君に選ばれたとか。
ふんふんと鼻歌混じりに台本を読みふける姿は真剣そのものだが、声の調子や言い回しは思いっきりふざけている。そうして時々、こうして声を出して読みだすものだから、ヴィンセントは吹き出すのを必死で堪えるという稀な体験をしていた。なんだろう、ギャップが可笑しい。
「まじめにしろ」
「えー?じゃあ付き合ってよ」
「…見せてみろ」
そうして2人して
額を突き合わせて過ごしたのは3日前。
それでも終始2人してふざけていた。
ヴィンセントが朗読し始めると
ユフィは自分の台詞も全て飛ばして
何度となく朗読を強請っていた…。
そうしてユフィ自身の練習など殆ど出来ないまま当日を迎えたのだ。
当日にも関わらずユフィの態度は変わらなかった。通しの稽古でさえ遅刻したらしく不参加だったと聞いている。
古株の連中は何も言わなかったが
新参者の者たちはあからさまに嫌みを言った。如月様のお遊び、だと。
ユフィは何も言い返さなかった。ただ、
ずっと稽古を離れた所から見学していたのを私は見た。心配していたがどうやらそれは杞憂に終わるようだ。
今のユフィを奴らに見せ付けてやりたい。彼らは果たしてなんと言うだろうか。
『嗚呼、海の神様。
…我等が父にして花婿よ。』
ここで腹の底に響く銅鑼の音が鳴り響く。いよいよクライマックスだ。
『我が一族をお守り下さい!!』
会場が一気にどよめき、這々からかけ声が上がった。それはさながら時の声だ。
『『そなたの願いを叶えよう』』
低い何重にも重なる機械的な音声。
そして美しい張りぼての龍が登場する。
瑠璃に金糸、青に水色、藍色など。
様々な極彩色で飾られた龍は、よくある紙を貼り付けたものではなくウータイ名産の絹糸で織られた一点ものだ。
それだけでも歴史的にも価値あるもの。
それをウータイは惜しみなく使う。
動かすのはウータイの屈強な青年達だ。彼らは一年、この日のために練習を重ねてきたという。まるで生きているかのように動く龍はユフィを囲む。途端に爆竹が鳴り、龍を飛び越えてユフィが舞台の最前へと進み出る。高く飛び上がると空中でくるりと一回転、それを追って下からは美しく飾った娘達が巨大な布を広げながら従った。
ウータイの大地新生だ。
肝心のユフィことお姫様は先端に巨大な水晶のついた杖を手にして掲げている。
龍玉。龍が唯一夢中になる至高の宝玉。
龍はそれを追いかけ牙を立てようとする。それをひらりひらりと避けるのは舞姫。
それは
とても優美な舞でも見ているかのようで
観客だけでなく龍神までもが動きを止め
見惚れているかのようだった。
『『 その玉はそなたに与えよう 』』
『『 我が母にして花嫁よ 』』
「では貴方様を祀る社を築きましょう」
「貴方の為に私は舞い歌い誇ると誓う」
「嘆き奢るなかれ私は我らを信じよう」
終幕の銅鑼が鳴った。
『『 この地を私の約束の地としよう 』』
(まるで龍玉に魅入られた神のようだった)
コメント
2010/02/17 20:26 シキ [編集]
感想ありかとー!!
神様=リヴァイアサン。
龍玉=召喚マテリアってとこでしょうか
ほら、ウータイは古い国だし
天然のマテリアだし希少だし
……わざとらしいぜ(笑)
2010/02/17 00:04 シキ [編集]
補足:
なんてゆーか
前から考えてたウータイ独自設定を使用。
あるところにお姫様が居て
王様に求婚されますが拒否します。
怒った王様は兵士を差し向けました。
お姫様は
住んでいた国を追われてしまいました。
「どうか我らをお助け下さい」
そうしてとうとう追い詰められた
彼女は海に身を投げてしまいました。
そこを哀れに思い助けたのが海の神様。
彼女が身を投げた所が浮き上がりました。新たな島が出来たのです。
彼女たちは大地を作り上げ王様を
追い払った神様を祀ることにしました。
実は色々と隠し設定がまだありますが
とりあえずなあらすじを(笑)
感想をお待ちしております。
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