爆弾解体を任された降谷さんと奴らを迎え撃つつもりの赤井さん。
そしてコナンくんはノックリストを守らないと、と言ってどこかへ行ってしまった。

「ったく、どいつもこいつも」

少しばかり素の様子が見えて笑ってしまった。赤井さんから借りた工具を手に準備を始めていく丸まった背中に寂しさが募る。もしかしてまだ怒っているのかな。
ようやく話し掛けてくれた声がやけに冷たい理由は、触れられない。

「お前はどうするんだ」

皆それぞれ自分のすべきことを見つけて行動に移している。降谷さんがこちらを見ずに手を動かしている姿を見下ろしながら、私も自分で自分の出来ることを見つける。
本当はこの場で彼を見守りたい。一緒にいたい。でも、降谷さんは私に、そんなことは望まない。

「観覧車内部を探った後、風見さん達と合流します。きっと大混乱になりますから」
「頼んだぞ。不審なことに気付いたら他の仲間に伝えて、お前は手を出すな」
「はい」
「ここに長居はするなよ」

さて、それはどうでしょう。返事がないことへぎろりと睨まれてようやく視線が交わる。ふっと微笑んだのが最後なんて嫌だけど、降谷さんはすぐに作業に戻ってしまった。
分かっている。今はこんなことをしている暇はないから。

「降谷さん」
「なんだ」

呼び掛けには反応してくれる。でもこれで終わりにしよう。
映画のワンシーンみたいなお別れは、また会えると言う約束は交わさない。

「……いえ、何でもありません」

どうかご無事で。それだけ伝えて私は走り出した。観覧車内を見終わったら公安の仲間に連絡を取って、騒ぎが起きたら一般人の保護が優先だ。
カンカンと迷いなく走り出して遠ざかっていく私を笑う声は届かない。

「ふっ。こんな時まで良い子だな、あいつは」

そうですよ。だって降谷さんの部下ですから。
後ろは振り返らずに、あなたが望むように踊ってみせます。

しばらくして、施設全部が闇に包まれた。停電になった時私はまだ観覧車内部にいて、少しばかり行動の遅さに後悔していた。念入りに調べていたのが仇となった。暗闇をスマホのライト頼りに進んでいく。
上からは嫌な音が響いている。何かが落ちてくる音。何もイメージがつかない私は怯えながらも先を行くことにした。まずはこの停電を何とかしなくては。電気制御室の場所を正確にしていなかった自身への苛立ちを隠せない。

「早く行かないとっ……」

この際どうでもいいと走り出したら何かに躓いて転んでしまった。いてて、と追加される独り言を掻き消すかのような銃声。壁を砕いていく弾丸の雨が降り注ぎ始めた。
体勢を低くしながら頭を抱える。止んだと思って歩き出したら狙ったように襲われるのでまた尻餅をついた。その時に破片で腕や足を切った痛みが走ったが撃たれるよりはいい。
少しの間そうしていたら、銃声がずいぶん上の方で聞こえるようになった。私がいる場所への乱射は減った。むしろなくなった。この機会に観覧車を出ようとよろけながらも急ぐ。
あちこち切り傷だらけでも止まってはいられない。だってまだ、彼らはこの狙われた観覧車の中にいるのだから。

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